行過(読み)いきすぎる

精選版 日本国語大辞典 「行過」の意味・読み・例文・類語

いき‐す・ぎる【行過】

〘自ガ上一〙 いきす・ぐ 〘自ガ上二〙
① ある場所を通って先へ行く。通り過ぎる。通過する。
蜻蛉(974頃)中「からうじていきすぎて、走井にて、破子などものすとて、幕ひきまはして」
② 目標を通り過ぎて先まで行く。ゆきすぎる。
③ 度を越して事をする。ゆきすぎる。
(イ) 常識的な行ないからはずれる。分を越えたふるまいをする。
四河入海(17C前)二「劉伶を抑下して作たは、あまり超越していきすきたと云て論じたぞ」
(ロ) 知ったかぶりや出すぎたことをする。通人ぶる。
洒落本南閨雑話(1773)怖勤の体「あいつがつれでの、いきすぎた口をきくやつよ」
(ハ) 意地がつよすぎる。張りがありすぎる。
浮世草子・好色一代男(1682)五「此所でなる程いき過て、男ふるほどの女郎よべ」
(ニ) 態度がなまいきである。
浄瑠璃・曾我五人兄弟(1699頃)一「おとなくれたる恋心、物思ひ顔もいきすぎたり」

いき‐すぎ【行過】

〘名〙
① 行き過ぎること。目的より先の所まで行くこと。ゆきすぎ。
② (形動) 度を越すこと。分を越えたふるまいをするさま。また、その人。ゆきすぎ。
談義本・教訓雑長持(1752)四「わる洒落いふて、冷笑(あざわらふ)いき過は、先祖の恩しらずのわるものといふべし」
③ (形動) 知ったかぶりや出すぎたことをすること。やたらに、通人ぶったり趣向をこらしたりするさま。また、その人。
※洒落本・魂胆惣勘定(1754)下「初心の客、はじめより此書のおきてをまもらんと欲すれば、〈略〉、ことわざにいへるいき過と云やうになり」
④ 先走ること。早とちりすること。
※洒落本・廻覧奇談深淵情(1803)其四「『くれろといふことか』『きついゐきすきサ』」

ゆき‐すぎ【行過】

〘名〙
① 行きすぎること。目的より先の所まで行くこと。いきすぎ。また、通りすがり
途上(1932)〈嘉村礒多〉「私は道の行き過ぎに私を彌次る子供が何より怖くて」
② (形動) 度を越すこと。分を越えたふるまいをすること。また、そのさま。おせっかい。いきすぎ。
随筆独寝(1724頃)下一〇二「是は異端のおしへにて、ゆき過といふ物也」
③ (形動) 知ったかぶりや出すぎたことを言ったりしたりすること。やたらに通人ぶったり趣向をこらしたりすること。また、そのさま。いきすぎ。
※滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)序「泣本赤本の目よりも、行過(ユキスギ)と嘲り、仮在行(きいたふう)と笑ふべし」

ゆき‐す・ぎる【行過】

〘自ガ上一〙 ゆきす・ぐ 〘自ガ上二〙
① 通りすぎる。通過する。いきすぎる。
万葉(8C後)二・一〇六「二人行けど去過(ゆきすぎ)難き秋山をいかにか君が独り越ゆらむ」
② 目的地よりも先へ行く。いきすぎる。
※俳諧・俳諧新選(1773)一「行き過ぎてもどる人あり藤の花〈李流〉」
③ 度を越えた行動をする。でしゃばる。おせっかいをやく。いきすぎる。
※洒落本・傾城買四十八手(1790)しっぽりとした手「又今時の小むすこは、とかくゆきすぎて、しゃれたがるものなるが」

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