老蘇森(読み)オイソノモリ

デジタル大辞泉 「老蘇森」の意味・読み・例文・類語

おいそ‐の‐もり【老蘇森/老曽森】

滋賀県近江八幡市奥石おいそ神社の森。ホトトギス名所。[歌枕
東路のおもひでにせむ郭公ほととぎす―の夜半一声」〈後拾遺・夏〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「老蘇森」の解説

老蘇森
おいそのもり

[現在地名]安土町東老蘇

奥石おいそ神社の社叢をいい、国指定史跡。古くから歌枕として都人にも知られ、時鳥や思い出、老いの哀しみなどを掛けて多くの歌に詠み込まれた。至徳元年(一三八四)九月の奥付をもつ奥石神社本紀(社蔵)によれば孝霊天皇五年、近江国の地面が裂け、水が湧き湖のようになったためにこの拡大を防ごうとした石辺大連は松や杉の苗を植えたところ、神助によってたちまちにして森となり、地を固めた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「老蘇森」の解説

おいそのもり【老蘇森】


滋賀県近江八幡市安土町東老蘇にある森。万葉時代から和歌に詠まれた蒲生野(がもうの)の一角に位置する森で、中山道の休憩場所として多くの旅人に親しまれてきた。古くは現在の数倍もある面積の大森林だったと推定される。伝説によると、かつてこの地方は水が湧き、とても人の住める場所ではなかったが、石邊大連(いしべのおおむらじ)という人物が木の苗を植えて神々に祈願するとまもなく大森林となり、大連が生きながらえて百数十歳を数えたことから「老蘇森」と名づけられたという。森の中には延喜式(えんぎしき)内社である奥石(おいそ)神社が鎮座し、古代から信仰の場として崇(あが)められた。低湿地に形成された大森林の一部が現存することから学術的にも貴重な場所であり、1949年(昭和24)に国の史跡に指定された。JR東海道本線安土(あづち)駅から車で約15分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

改訂新版 世界大百科事典 「老蘇森」の意味・わかりやすい解説

老蘇森 (おいそのもり)

歌枕。現在の滋賀県近江八幡市の旧安土町にある森で,《延喜式》に見える近江国蒲生郡十一座の奥石(おいそ)神社が鎮座。東山道に沿い詠作が多い。《後拾遺集》巻三〈大江公資朝臣 東路の思ひ出にせむ郭公おいその杜の夜はのひとこゑ〉。軍記物にも描かれ,《太平記》巻二の俊基朝臣関東下向の章の道行,〈鏡ノ山ハ有トテモ,泪ニ曇リテ見ヘ分ズ。物ヲ思ヘバ夜間ニモ,老蘇森ノ下草ニ駒ヲ止テ顧ル,古郷ヲ雲ヤ隔ツラム〉は名高い
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