溶解熱
ようかいねつ
heat of solution
溶質が溶媒に溶けるときに出入りする熱エネルギー、とくに1モルの溶質を溶かすときの熱量をモル溶解熱という。この値は溶媒の量によって異なるから、十分に多量の溶媒に1モルの溶質を溶かしたときの熱量を「比溶解熱」と定義する。水酸化ナトリウムや塩化カルシウムなどは溶解時に発熱し、溶解熱が正であるが、硝酸アンモニウムや硝酸カリウムは水への溶解熱は負である。つまり溶解時に吸熱がおこる。
溶解熱は、結晶の格子エネルギーと、溶質の溶媒和による安定化エネルギーの差である。したがって塩化ナトリウムのように両方がほぼ等しい場合は溶解熱は小さく、溶解度もほとんど温度依存性を示さないことになる。溶解熱が大きいものは、溶解度の温度依存性も大である。
[山崎 昶]
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溶解熱
ようかいねつ
heat of solution
物質が液体中に溶けるとき出入りする熱量。溶解の際に吸熱または発熱するとき,それぞれを負または正の溶解熱という。負の溶解熱 (吸熱) を示すものは温度上昇とともに溶解度が大きくなり,正の溶解熱 (発熱) を示すものはその逆の傾向を示す。これはル・シャトリエの法則の一例である。溶解熱の大きさは温度と溶解して生じる溶液の濃度によって異なる。したがって溶解熱の大きさは温度と濃度を同時に示すことが必要である。一定の濃度の溶液をつくるときの溶解熱をその濃度における積分溶解熱,ある濃度の溶液に微量の溶質を加えたとき生じる熱量を 1molあたりに換算したものを微分溶解熱と呼ぶ。溶解熱は熱化学の分野で重要である。
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溶解熱
ヨウカイネツ
heat of dissolution
一定量の溶質の溶解に伴うエンタルピー変化をいい,積分溶解熱と微分溶解熱とがある.溶媒1000 g 当たり溶解させた溶質の物質量をm,それによるエンタルピー変化をΔHとするとき,ΔHはmによって変化する.ここで,ある溶質濃度 mx に対応するΔHをΔ Hxとすると,
Δ Hx/mx
が積分型,
[d(ΔH)/dm]m=mx
が微分型となる.一般に,mが小さい低濃度領域では,両者はほとんど等しい値を示すが,高濃度になるほど後者のほうが小さくなり,両者の差は大きくなる.
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溶解熱【ようかいねつ】
溶質が溶媒に溶解するとき吸収または放出される熱量。普通1モルの溶質を一定量の溶媒に溶かしたとき出入りする熱量をいう。一般に発熱する場合を正,吸熱する場合を負と考える。氷と塩類などによる寒剤はこの溶解熱(負)を利用するもの。
→関連項目溶解
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ようかい‐ねつ【溶解熱】
〘名〙 溶媒中へ溶質が溶け出すときに発生または吸収する熱量。溶質によって発熱する場合と吸熱する場合とがある。〔稿本化学語彙(1900)〕
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ようかいねつ【溶解熱 heat of dissolution】
溶質(気体または固体)が溶媒(液体)中に溶解する際に発生,ないしは吸収される熱量を指す。ふつう,液体どうしの溶解の場合は混合熱という。溶解熱は,温度の関数であると同時に濃度によっても変わるので,最終溶液濃度を規定する必要がある。室温では多くの場合,溶解は発熱を伴うために溶液の温度は上昇するが,硝酸アンモニウム,塩素酸カリウムなどの塩類の水への溶解は吸熱を伴う。これらの塩類と水を用いた寒剤は,この冷却効果を利用している。
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デジタル大辞泉
「溶解熱」の意味・読み・例文・類語
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世界大百科事典内の溶解熱の言及
【混合熱】より
…普通は液体どうしの混合についていうが,気体あるいは固体どうしでも差支えない。液体‐気体,あるいは固体‐液体間の場合に混合したあとが均一な溶体であれば,その熱量変化は溶解熱と呼ばれる。また2種類のうち一方がすでに溶液で,他方がその溶媒の場合には希釈熱の名で呼ばれる。…
※「溶解熱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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