塩素酸カリウム(読み)えんそさんカリウム(英語表記)potassium chlorate

精選版 日本国語大辞典 「塩素酸カリウム」の意味・読み・例文・類語

えんそさん‐カリウム【塩素酸カリウム】

〘名〙 (カリウムKalium) 塩素酸のカリウム塩。化学式 KClO3 無色の光沢のある板状結晶。強い強化剤で、有機化合物、硫化物などと混ぜ、摩擦打撃を与えると爆発する。ことに、赤リンとの混合物は鋭敏で危険。触媒として二酸化マンガンなどを加えて熱すると分解して酸素を発生する。劇薬マッチ花火、爆薬、漂白剤染料、医薬品、分析試薬などに用いられる。塩剥(えんぼつ)

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デジタル大辞泉 「塩素酸カリウム」の意味・読み・例文・類語

えんそさん‐カリウム【塩素酸カリウム】

塩素酸のカリウム塩。無色の板状結晶。強い酸化作用を示す。固体のままでも、有機物あるいは酸化されやすいものが混在すると、爆発する。マッチ・花火・漂白剤などに使用。化学式KClO3 塩ポツ

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改訂新版 世界大百科事典 「塩素酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩素酸カリウム (えんそさんカリウム)
potassium chlorate

化学式KClO3。塩剝(えんぼつ)/(えんぽつ)(〈ぽつ〉はポタシウムpotassiumの短縮)ともいう。光沢のある,さらさらした無色の単斜晶系板状晶。融点368℃,比重2.326。屈折率1.5167。加熱すると融点以上(400℃)で塩化カリウムKClと過塩素酸カリウムKClO4に分解し,さらに加熱すると塩化カリウムと酸素に分解する。

 4KClO3─→3KClO4+KCl

 KClO4─→KCl+2O2

金属酸化物,とくに二酸化マンガンMnO2が共存すると,この反応は著しく促進され70℃でも分解が始まるので,実験室で酸素をつくるために利用される。水100gに対する溶解度は3.3g(0℃),7.2g(20℃),57g(100℃)。エチルアルコール100gに常温で0.83g溶ける。アルカリに易溶。有機物,炭素,赤リン,硫黄,硫化物などと混ぜたり,これを加熱したり,衝撃を与えたりすると猛烈な爆発を起こし,非常に危険であり,濃硫酸や濃硝酸に触れても爆発しやすい。長期間保存や日光にさらされたものは,次亜塩素酸塩を含み,とくにこの傾向が著しいから,保存には遮光,密閉するよう注意すべきである。中性,アルカリ性の水溶液は酸化作用を示さないが,酸性では強い酸化剤となる。塩酸と加熱すると,塩素,二酸化塩素ClO2を発生する。

 石灰乳に塩素を通じて次亜塩素酸カルシウムCa(ClO)2をつくる際に副生する塩素酸カルシウムCa(ClO32の溶液に塩化カリウム濃厚液を加え,複分解させたのち,冷却して塩素酸カリウムのみを析出させる。食塩電解で得られる塩素酸ナトリウムNaClO3と塩化カリウムの複分解を利用してつくるほか,塩化カリウムの電解で生ずる塩素と水酸化カリウムを直接反応させる方法や,次亜塩素酸カリウム水溶液の加熱によってつくる方法がある。酸化剤としてマッチ,花火,爆薬の原料,漂白剤,染料,無機薬品,医薬品製造原料,実験室における酸素の製造等に使用される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩素酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩素酸カリウム
えんそさんかりうむ
potassium chlorate

塩素酸のカリウム塩。石灰乳(水酸化カルシウム)に塩素を反応させて塩素酸カルシウムをつくり、これを塩化カリウムで複分解して製造する。

塩化カリウムの熱濃厚水溶液を電解する方法も行われる。無色の板状結晶。常温では安定であるが、400℃以上で分解して酸素を発生する。

この反応は、二酸化マンガンが存在すれば約200℃、酸化鉄(Ⅲ)の存在で190℃でおこる。このため実験室での酸素の発生法としてよく用いられるが、有機物、硫黄(いおう)、炭素などが混入すると爆発するので危険であり、この方法の適用はなるべく避けたほうがよい。強い酸化剤であるから、有機物、リン、硫黄、チオシアン酸塩、アンモニウム塩などと混ぜると衝撃や摩擦によっても爆発する。金属粉が存在するともっとも激しい。吸湿性はないが水に溶け、アルコールにもいくぶん溶ける。中性およびアルカリ性溶液中では酸化作用を示さないが、酸性溶液では酸化剤として働く。マッチ、花火など爆薬の原料、漂白剤、医薬品の製造に用いられる。また防腐剤となり、染料の原料となる。医薬(うがい薬、収斂(しゅうれん)剤)としても用途がある。長期間保存したものや、日光にさらされたものは亜塩素酸カリウムを含み、可燃性物質と接触しただけで爆発することがある。濃硫酸、濃硝酸に触れても爆発しやすい。劇薬。密閉容器内に遮光保存する必要がある。

[鳥居泰男]

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化学辞典 第2版 「塩素酸カリウム」の解説

塩素酸カリウム
エンソサンカリウム
potassium chlorate

KClO3(122.55).塩ポツともいう.塩素酸ナトリウムと塩化カリウムの複分解によりつくる.工業的には,塩化カリウム水溶液を隔膜を用いず電解してつくる.光沢のある無色の単斜晶系板状結晶.融点356 ℃.密度2.32 g cm-3.加熱すれば400 ℃ 以上で塩化カリウムと過塩素酸カリウムに分解し,さらに加熱すると酸素と塩化カリウムに分解する.二酸化マンガンの存在下では200 ℃ で分解され,実験室で酸素を得るために利用される.水100 g に対する溶解度は3.3 g(0 ℃),57 g(100 ℃).エタノールに微溶,アセトンに不溶.強い酸化剤で,有機物,炭素,硫化物,硫黄,赤リンなどとまぜたものは加熱や衝撃によって爆発する.濃硫酸,濃塩酸に触れても爆発しやすい.酸性水溶液も強い酸化剤であるが,中性,アルカリ性水溶液には酸化作用がない.マッチ,花火(赤紫色),煙火,爆薬の原料,漂白剤,殺虫剤,除草剤,防腐剤,医薬品の製造,分析試薬,酸化剤などに用いられる.劇薬.[CAS 3811-04-9]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩素酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩素酸カリウム
えんそさんカリウム
potassium chlorate

化学式 KClO3 。無色,光沢のある単斜晶系の板状晶で比重 2.34。冷水 1mlに 1g溶ける。融点 368℃で,この温度以上では分解して過塩素酸カリウムと酸素になる。強い酸化剤で,有機物,硫黄,リン,亜硫酸塩,次亜リン酸塩など酸化されやすい物質と混ぜ合せたものは,加熱または衝撃で爆発する。硫酸を加えても爆発し危険である。爆薬,マッチ,花火などのほか,染料,無機薬品,医薬品の製造や実験室における酸素の製造に使われる。

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百科事典マイペディア 「塩素酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩素酸カリウム【えんそさんカリウム】

化学式はKClO3。比重2.326(39℃),融点368℃。塩剥(えんぼつ)とも。光沢ある無色の結晶。水に可溶。熱すると酸素を放って分解するので酸化剤に用いられる。硫黄,リン,有機物などと混ぜると加熱,衝撃などによって爆発。マッチ,花火,爆薬の原料。漂白剤,染料,薬品の製造にも使用。

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