溶解度
ようかいど
solubility
一般的に、ある特定の溶媒にある溶質が溶ける際には、上限があってそれ以上は溶解しない。この上限を溶解度とよび、通常、純溶媒100グラムに溶解するグラム数で表す。たとえば、塩化ナトリウムの水に対する溶解度は、25℃で36.8グラムであるという。
固体の溶解度は、通常は温度の上昇とともに大きくなる。溶解熱がマイナスの値をとるものは、溶解時に吸熱がおこるが、この際は高温ほど大きな溶解度を示すことになる。溶解熱がプラスのもの、たとえば炭酸リチウムなどは、高温ほど溶解度が小となるが、このような例は少ない。
[山崎 昶]
溶解度を温度に対してプロットすると、溶解度曲線solubility curveが描ける。溶解熱の絶対値が大きいほど傾斜は急になる。硝酸アンモニウムのような大きな傾斜を示すものは、溶解熱が大きくマイナスであることを示す。塩化ナトリウムのようにほとんど温度依存性を示さないものもある。
水和物の水への溶解度は無水物のものとして測定する。溶解度が著しく大となると、結晶水の中に溶解してしまうような場合も存在する。チオ硫酸ナトリウムなどがその例である。
溶解熱は固相と液相との中での状態の変化に伴うエネルギーの出入りである。したがって、固相が異なるものに対しては、同じ化合物に対しても異なった溶解度曲線が描かれることになる。
温度によって溶解度に大きな差が現れる場合には、この差を利用して再結晶により物質の精製が行える。たとえば、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)の80℃における飽和溶液を0℃に冷却すると、ほとんどが結晶として析出する。
[山崎 昶]
気体の溶解度は、温度と圧力とに関係する。温度が低いほど、また圧力が高いほど大きくなる。ビールやサイダーなどは、室温に放置したものの栓を抜くと、圧力が急激に減少して1気圧に下がるため激しく発泡し、吹きこぼれるが、冷蔵庫に長時間保存しておいたものは、低温ほど溶解度が高いこともあって発泡が激しくないことは日常経験していることである。いわゆる潜水病も、圧力の急激な変化による気体の溶解度の減少のためにおこる。海中での大きい圧力下では、血液中に溶けている酸素や窒素などが、急激に海面に浮上したりして圧力が下がったときに血管の中に気泡として遊離することが原因である。近年ヘリウムが窒素のかわりに酸素の希釈剤として用いられるようになったのは、溶解度が大きいことと、血管壁の透過が速いことなどを利用したものである。
[山崎 昶]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
溶解度
ある物質(溶質)が他の物質(溶媒)に溶解する限度.飽和溶液中における溶質の濃度で表される.岩石の中を通過する媒体の主成分はH2Oであって,岩石の成分がH2Oに溶解して移動するので,岩石の変化や形成には成分のH2Oへの溶解度に著しく関係する.しかし岩石を作る造岩鉱物などのH2Oへの溶解度が非常に小さく,熱水溶液を扱うため測定に技術的な困難さもあり,工業的に重要な石英を除いてあまり測定されていない.SiO2の高温高圧の水溶液に対する溶解度の測定は多数の報告がある.代表的なモーレイおよびヘッセルゲッサーの実験は高圧力実験の後に常圧にして冷却測定したが,ケネデイは高圧力を保持しながら途中で水溶液を取り出し測定した[Morey & Hesselgesser : 1951, Kennedy : 1950].
出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報
溶解度
ヨウカイド
solubility
飽和溶液中の溶質の濃度をいう.一般に温度によってかわるので,温度との関係を図示した溶解度曲線が用いられる.気体の溶解度は一般に温度が上がると減り,固体の溶解度は増す.まれには水酸化カルシウムのように温度が高いほど溶解度の小さいものや,食塩のように温度によって溶解度があまりかわらないものもある.固体の液体に対する溶解度は,溶媒100 g に溶解する溶質の量(単位 g)で表すことが多く,液体どうしのときは両者のモル分率,気体の液体に対する溶解度は0 ℃,1 atm に換算したときの体積比で表される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
溶解度【ようかいど】
溶質が溶媒に溶け得る最大量,すなわち飽和溶液中の溶質の濃度をいう。普通溶媒100g中の溶質のグラム数か,溶液100g中の溶質のグラム数で表す。一般に液体に対する固体の溶解度は温度の上昇とともに増大するが,水酸化カルシウムのように逆に減少したり,食塩のようにあまり変化しないものもある。液体に対する気体の溶解度は温度が高くなると減少し,圧力にほぼ比例して増大する。→ヘンリーの法則
→関連項目過飽和|溶液
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ようかい‐ど【溶解度】
〘名〙 飽和溶液中に含まれる溶質の濃度。すなわち、ある溶媒に溶ける溶質の最高限界濃度で、溶質が固体・液体の時は温度が、気体の時は温度と分圧が決まれば一定の値をとる。ふつう溶媒または溶液一〇〇グラム中に溶けている溶質のグラム数で表わす。〔稿本化学語彙(1900)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
溶解度
ようかいど
solubility
飽和溶液中の溶質の濃度をいう。溶解度は温度によって異なり,溶質が固体,液体の場合,温度と溶解度との関係を図示したものを溶解度曲線という。普通は溶媒 100g中の溶質の量 (グラム数) で表わす。溶質が気体の場合の溶解度は,温度のほかに圧力の影響も受ける。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
溶解度
飽和溶液での溶質の濃度.溶解度は温度によって変化するので,一定温度での溶解度を示す必要がある.溶質が気体の場合は圧力も重要.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
デジタル大辞泉
「溶解度」の意味・読み・例文・類語
ようかい‐ど【溶解度】
一定量の溶媒に溶ける溶質の量の上限の限度。通常は溶媒100グラムに溶けうる溶質のグラム数で表し、値は温度によって変わる。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ようかいど【溶解度 solubility】
一定の温度,圧力のもとで,溶質が溶媒に溶解する限度,すなわち飽和溶液の濃度を溶解度という。一般に溶解度は温度,圧力,溶質・溶媒の成分数によって変化する。とくに溶質が気体である場合にその溶解度は圧力の影響を受けやすく,ほぼ圧力に比例して増える(ヘンリーの法則)。また温度が上がると減るのが普通である。気体の溶解度は,気体成分の分圧が760mmHgのとき,単位体積の溶媒に溶解する気体の体積(0℃,760mmHgに換算)で表す(ブンゼンの吸収係数)。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報