日本大百科全書(ニッポニカ) 「机」の意味・わかりやすい解説
机
つくえ
事務、読書などを行う台形の家具で、甲板(こういた)と脚および引出しからできている。古くから台の用途にはテーブルが使われていた。今日の事務用机のような形ができあがった歴史は、ごく新しいことである。
[小原二郎]
歴史
西洋の机の原型は中世僧院の写字台で、それは櫃(ひつ)の上に蓋(ふた)付きの箱をのせたものであった。17世紀になって、箱の蓋を開くとそれが甲板になる形式が生まれ、これをビューローbureauとよんだ。18世紀には、箱の中が書棚になり、それをセクレタリーsecretaryと名づけた。一方同じころに、婦人用として、小形の机の両袖(そで)に引出しのついたデスクテーブルとよばれるものが使われていた。それが木製デスクの形に発展したのは19世紀で、現在のような事務専用の机が生まれて広く普及したのは、20世紀になってからのことである。
日本では『古事記』と『日本書紀』に机という字が出てくるが、それは卓または案(あん)の一種であった。筆記用のものが現れたのは、経机がつくられた奈良時代で、室町時代には建物の一部に造り付けになった出文机(だしふづくえ)が現れ、やがて付書院(つけしょいん)へと発達していった。
机は第一次世界大戦の前までは、ヨーロッパにおいてもほとんど木製であった。戦後ドイツのバウハウスで鋼管家具がつくられ、それが糸口になって新材料の家具がつくられるようになった。わが国は第二次世界大戦後アメリカに倣ってスチール製机をつくったが、それが急速に普及して、いまでは事務用机といえばスチール製のものを連想するほどに広く使われている。最近ではオフィスオートメーション(OA)の普及によって、コンピュータ機器にあわせた各種の机がつくられている。
[小原二郎]
種類
机には座り机と立ち机がある。座り机は伝統的な和室用の書き机で、畳の上で使用する。立ち机は椅子(いす)と組み合わせるもので、平机(袖のないもの)、片袖机、両袖机、タイプ用机、コンピュータ用机などの種類がある。材料による区分としては、木製机、スチール製机、木金の混合机などがある。机の規格には事務用と学校用のJIS(ジス)(日本工業規格)がある。
机の寸法のうち、機能的にもっともだいじなものは高さである。高さは椅子の座面から測るのが合理的で、座面から甲板までの距離を差尺(さじゃく)という。事務用椅子の高さは40センチメートルが標準で、日本人成人男子に適した差尺の平均は30センチメートル、女子の差尺の平均は28センチメートルであるから、事務用机の高さは70~68センチメートルを目安と考えればよい。JISでは70センチメートルと67センチメートルになっている。また、下肢のためのスペースとしては、間口方向に60センチメートル以上の空きをとるように決めてある。
[小原二郎]