オフィスオートメーション(読み)おふぃすおーとめーしょん(英語表記)office automation

精選版 日本国語大辞典 の解説

オフィス‐オートメーション

〘名〙 (office automation) (官庁・会社などの)事務部門に、コンピュータなど種々の情報機器を配置し、機器で代替可能な部分を自動化して、事務処理の効率化を図ること。OA。

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デジタル大辞泉 の解説

オフィス‐オートメーション(office automation)

コンピューター・コピー機・ファクシミリなどを利用して事務の省力化を図り、必要情報を即時に使用したり送受信したりできるようにすること。また、そのシステム。OA。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

オフィスオートメーション
おふぃすおーとめーしょん
office automation

オフィス業務の作業過程を分析して環境を整備し、エレクトロニクス機器と情報技術(IT)を組み合わせシステム化することによって、効率efficiencyと効果effectivenessを図り、生産性の向上を実現すること。略してOAという。

 ここでいう「オフィス」とは、私企業(個人企業、合名会社、合資会社、株式会社、有限会社、相互会社など)、公企業(国、地方自治体など)、協同組合、学校、病院など、主として組織体として運営する場所をさす。「オートメーション」の概念は、人間がエレクトロニクス機器を操作して制御や監視をすることにより、生産過程の一連の手順に従って、関知・計測、計算、判断、検索、作成、照合、編集、伝達、整理、保存などの命令を組み合わせて自動連続的に処理することである。オフィス業務は一般的に処理内容が多様で、意思決定のように思考作用を伴った業務が多く、製品製造の作業工程におけるロボットなどを使った自動制御を目的としたファクトリーオートメーション(略してFAという)とは区別して使われる。

 企業は、社会のニーズに応じた生産活動やサービスを通して社会に貢献することによって、その存続・維持・成長を図る。そのため私企業などでは、経営戦略に基づいて商品を仕入れ、販売費や一般管理費を節減し効率と効果を高め、計画plan、実施do、評価seeを行い、経営活動のサイクルを通して収益を獲得する。OAはそのための手段の一つであり、企業はOA化を促進することで1人当りの生産量を増やし、オフィスでの生産性を高めコスト削減に努める必要がある。

[新 茂則]

オフィス業務とOA化

企業の業務はおもに、専門スタッフ(人事、総務、経理)、ライン(購買、製造、販売)、管理スタッフ(企画、統制、調査)に分けられる。工場内で直接製造を行う作業業務に対して、オフィス業務は事務処理業務を中心として行われる。オフィス業務は、あらかじめ定まった業務の処理の流れと手順を繰り返すルーチンワークとしての定型業務と、個々人のアイデア、経験、能力などを活かして、問題の発見・認識・分析、代替案の模索・評価・選択・実行、意思決定の再検討などを行う非定型業務とに分けられる。

 定型業務のように処理パターンがあらかじめ決まっている場合、予算や採算性を考慮したものであれば、OAの導入は比較的容易である。しかし非定型業務の場合、自動連続的処理の困難な予測、計画、判断、実行をオペレーションズ・リサーチ(OR)の手法を用いて意思決定を行うなど、知的創造性が必要とされ、それをどのようにOA化するかが重要である。このように考えるとOA化の実現は、全社的な経営戦略の視点からとらえたシステム設計が必要であり、なおかつ情報技術の急速な進展に伴う投資効果の期待と拡張性のあるシステム構築が考慮されなければならない。

 オフィス業務は「文書主義の原則」といわれるように、情報の伝達手段の中心は文書であり、そのためオフィスでは文書作成に必要なデータの入手、文書の作成・編集、保管など一連の処理が行われる。文書は、わかりやすい正確な伝達および整理・保存が基本的な要件である。なお、企業活動にインターネットが普及した1990年代以降、ファクシミリや郵送といった従来の伝達手段によるよりも、ペーパーレス化を目ざして、電子メールなどを用いた処理が迅速かつ合理的であるとされ、広く普及するに至っている。また、グローバルネットワークの実現によりインターネットを通した電子商取引が開始され、インターネットは情報の受発信にとどまらず巨大な電子市場を形成している。インターネット加入者が増えるほどネットワークの使用価値が高まるいわゆる「ネットワークの波及効果」が働き、オンライン商店やネットオークションといったB to C(Business to Consumer=消費者向け電子商取引)や、企業どうしがネット上で取引を行うB to B(Business to Business=企業間電子商取引)が行われている。

 なお、インターネットのおもな特徴と機能としては、以下の点があげられる。

(1)地理的条件の制約からの解放
(2)マルチメディアなどのインタラクティブinteractive(双方向・相互作用)な利用
(3)情報資源の共有化
(4)多数の相手に向けたリアルタイムな情報発信
(5)ローコストな通信費用
 このような利点から今日のオフィス業務では、LAN(ローカルエリアネットワーク)を使ったインターネットの効果的な導入が必要不可欠となっている。

[新 茂則]

OAとFAの導入背景

オートメーションはオフィス業務のOA化以前に、製造部門において、大量生産に伴う生産コストの低廉化の要求から、機械の制御・監視などにより製造作業を自動化するために推進されてきた。とくに装置産業や自動車・家庭電化器具の製造工程での組立て機械産業では、高性能な産業用ロボットを使って自動化したり、CAD/CAMを生産物の設計から製造に幅広く使い製造効率を高めている。このように、工場などの製造工程では労働生産性をあげるためFA化が図られてきた。一方、オフィス業務では大量生産された商品の販売量増加に伴い、事務処理の肥大化現象が生じ、それを迅速、正確、大量処理するため、コンピュータによるシステム化が進んだ。とくに膨大な量の商品を取扱う流通業、運送業、倉庫業では、OA化が著しく進み、商品管理を販売に生かす方法としてPOS(ポス)システム(販売時点情報管理システム)の導入が進んだ。POSによる商品管理では、商品に表示されたバーコードをスキャナーで読み取り、収集されたデータをPOSシステムに集積して、仕入管理、販売管理、在庫管理に効率的に活用している。また、POSシステムは売れ筋商品や死に筋商品の調査、検出による品揃えの強化に役立ち、さらには売れ筋商品の陳列方法や配置といった販売管理にまで幅広く応用されている。

 こうしたOAとFAは、日本の経済成長に伴う大量生産の必要性や、プラザ合意(1985)以後の円高に対処するための原価管理によるコスト削減という背景がある。さらに、1990年代初頭まで続いたバブル経済が崩壊し、それに伴い人件費の削減が叫ばれるとともに、消費者ニーズの多様化や高度化に応じて、多品種少量生産による市場細分化戦略に対応したOAの導入が必須(ひっす)となっている。

[新 茂則]

OA環境の変遷と経営戦略

コンピュータが日本の企業に導入され始めたのは1950年代後半からであり、当時の汎用コンピュータメインフレーム)による事務処理はコンピュータがデータを一括処理していくバッチ処理が中心であった。1960年代後半になると、1959年にアメリカで開発された事務処理言語のCOBOL(コボル)、科学技術計算向きのFORTRAN(フォートラン)などのプログラム言語を用いた、構造化プログラミングの開発技術が進んだ。この時期より1970年代にかけてLSI(大規模集積回路)が開発されたことでコンピュータの性能が飛躍的に向上し、ホストコンピュータと端末機をオンラインで結んだ銀行の現金自動預金支払機(ATM)や旅行業者の座席予約システムなどのオンラインシステムが実用化されていった。また、販売情報システム、受注情報システム、生産管理システム、物流システムなどの業務システムを経営に生かそうとする、経営情報システム(MIS)の考え方が広まった。1970年代後半から80年代にかけては、汎用コンピュータで組織全体の情報を一括管理するとともに、タイムシェアリングシステム(TSS)を導入した複数の端末機を同時に使用してオフィス作業を行ったり、パーソナルコンピュータを各部課やコンピュータルームで使用し、複写機、ファクシミリなど情報処理機器を組み合わせて活用するようになった。その結果、オフィスの生産性が向上して、能率的な情報処理活動が行えるようになり、企業のOA化はいっそう進んだ。1980年代なかば以降はパソコンがオフィスで急速に使われ始め、当初はBASIC言語などが使用されていたが、メインメモリーハードディスクの記憶容量が増大するとともにCPU(中央処理装置)の処理速度が向上し、MS-DOSなどのオペレーティングシステム(OS)で作動するアプリケーションソフトウェアが利用できるようになった。1980年代なかばから後半にかけては、情報システムを経営戦略に生かす戦略的情報システムstrategic information system(SIS)の概念が生まれた。これは従来の合理化、省力化、効率化を目ざす経営情報システムに加え、差別化、既存事業の質的改善、企業間競争における優位性の獲得、維持を目的とした戦略的情報通信システムである。

 1990年代以降、高い機能・性能を備えたクライアント・サーバーシステムがオープン化、マルチメディア化、ダウンサイジング化し、それに伴いオフィス業務は、広域化、統合化、迅速化、共有化などの要素を加速させ、従来の一つのコンピュータによる集中処理から複数のコンピュータでの分散処理へと処理方法が変化した。このような現象は企業に「範囲の経済性」「連結の経済性」をもたらし、OA化の重要性は企業経営にとってますます高まった。また、サイバースペースcyberspace(電脳空間)における電子商取引の進展とともに、オフィス業務の目的に応じたネットワークシステムの構築が不可欠となった。

[新 茂則]

OA機器のハードとソフト

オフィスでのエレクトロニクス機器の中心は情報処理機器であり、OA化を推進し環境を整備するには、それに対応したコンピュータと周辺機器および活用技術が伴わなければならない。そのためには、ハードウェアとソフトウェアが合理的、能率的に組み合わされ、必要に応じてリアルタイムに活用できる操作性の優れた環境整備の充実が必要である。

 ハードウェアのおもなものとしては、大型汎用コンピュータ(メインフレーム)、サーバーマシン、パーソナルコンピュータ(タワー型、デスクトップ型、ノートブック、携帯情報端末など)がある。周辺装置としては、パソコン画面を表示するディスプレー装置(モニター)、プリンター(印刷機)、ソフトやデータを記録・保存するハードディスクドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、スキャナー、ビデオキャプチャー装置、テレビ会議装置、プロジェクターなどがある。通信関連には、ルーター、ターミナル・アダプタ(TA)、モデム、LANカードなどがある。そのほかにも、ファクシミリ、複写機、携帯電話などは不可欠である。

 ソフトウェアのおもなものは、UNIX(ユニックス)、Windows(ウィンドウズ)、MacOS(マックオーエス)、Linux(リナックス)など基本ソフトであるOS(オペレーティングシステム)のほか、ワードプロセッサー、データベース、表計算、グラフィック、通信、翻訳、プレゼンテーション、スケジュール管理、ネットワーク管理などを扱うアプリケーションソフト、プログラミング言語、個別業種・業務向けのパッケージソフトなどがある。

[新 茂則]

OAの課題

高度情報化社会の出現により、企業の国際化、情報化はますます加速している。情報通信基盤(ネットワークインフラストラクチャー)が整備され、イントラネットintranet(企業内ネットワーク)やエクストラネットextranet(イントラネットをつなげた特定企業間での情報共有)の構築が可能となり、オフィス事務そのものが変化してきた。

 第一に、オフィス環境の急速な変化によって、OA機器の活用能力を高める情報リテラシー(コンピュータやネットワークの活用能力)が要請されている。そのため、ソフトの操作、ハードに対する知識、コンピュータ・ネットワークの知識などの基本的な理解・習得に向けたエンドユーザーコンピューティングend user computing教育が望まれる。Windowsが普及し始めた1995年(平成7)以降、情報技術を活用する能力、あるいはアクセスする機会をもつ者ともたない者との二極化現象がみられ、デジタルデバイドdigital divide(情報格差)が進んだ。とくに、中高年層でのコンピュータ活用の二極分化は著しく、高度情報化社会に対応できる人材の育成が重要との認識から、2000年11月には「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(IT基本法)が成立した(2001年1月施行)。その後、操作の簡易性を備えたソフトの開発と導入、一般家庭へのパソコンの浸透などにより、多くの人が活用できる環境が整ってきたが、今後とも、人材教育システムなどの社会整備は不可欠である。

 第二に、高性能な情報処理機器は、文字、静止画像、動画、音声などの高度な複製機能をもつ。それと同時に、国境を越えた世界的な規模でのコミュニケーションが可能となり、不特定多数の相手に瞬時に情報を伝達できる機能を備えている。このため、著作権などの知的財産に対する保護、個人情報の保護、不正アクセスを行うハッカーなどに対する情報セキュリティの確保、電子取引における責任の明確化など、具体的な保護対策や犯罪の防止策が講じられる必要がある。また、国際的な協調も重要である。

 第三に、今日のオフィス環境ではOA機器が長時間使用されるため、ユーザーの健康管理を配慮した環境整備が望まれる。とくに文書作成、データの入力・検索などの業務を画面(ディスプレー)上で行うため、画質や解像度の向上のみならず、オフィスの照明や採光、椅子や机の高さや広さ、配置に至るまでの配慮が必要である。また、処理速度の遅い機器、操作性の劣ったソフトの使用などによるストレスや、これらの機器の使用に起因する目の疲労、腰痛、肩こりなど身体に与える影響も深刻である。こうした人体の健康への悪影響を最小限に防止するため、工学的な「人間にやさしい」OA機器やソフトウェア開発のための環境整備が必要とされる。

[新 茂則]

『中村茂著『図解コンピュータシリーズ オフィスオートメーション入門』(1981・オーム社)』『高橋三雄著『情報基礎管理学』(2000・放送大学教育振興会)』『新茂則他著『マーケティング・リテラシー』(2000・税務経理協会)』『涌田宏昭著『オフィス・オートメーション入門』(日経文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 の解説

オフィス・オートメーション
office automation

略してOAという表現が1980年ころから使われはじめ,現在では日常用語となっている。オフィス・オートメーションの言葉自体は1950年代末にアメリカで使用されている。当時はファクトリー・オートメーション(FA)が進行しつつあり,コンピューターの事務処理への適用がこれと対比的に扱われてオフィス・オートメーションとなった。しかし50年代から70年代中ごろまでのコンピューターの事務面への適用は,定型化されたデータ処理を中心とするもので,オフィス全体の仕事にわたるものではなかった。これに対し80年代のOAは,電子工学の著しい発展と組織環境システムの見直しという背景をもとに,オフィス・システム全体の効率化・機動化を推進することを目的としている。したがってオフィスで行われる作業や活動がすべてその効率化,機動化の検討対象となる。さらに,オフィスの機能を拡張して考えられるオフィスの新システムも包含される。

 OAはまた,オフィスを一つの情報空間とみなし,より情報化された機能と空間のオフィスとして再構成することを目指す。使用される技術は,情報技術,組織技術,システム技術等であり,特徴的には,多様化した情報媒体と複合化したコミュニケーション・システムに表れ,組織的には集中側面と分散側面が並立する。機器としてはパーソナル・コンピューター(パソコン),オフィス・コンピューター(オフコン),ワードプロセッサー(ワープロ,WP),ファクシミリ(FAX),複写機,コンピューター端末等があり,ワークステーションが発達する。光通信など先端技術の活用が盛んなのも,このオフィス・システムの特色である。機器のレベルとOAシステム設計の考え方で,オフィス空間の一部分は,完全自動化もしくは無人化される。これは自動オフィスと呼ばれる。

 OAブームは80年くらいまでは言葉が先行し,実態が伴わないきらいもあったが,81年前後から産業界は急速にコンピューターを中心とするOA志向を強めた。最も数の多いパソコンをはじめ,オフコン,日本語ワープロの各企業の保有台数は急増した。またこうしたOA機器の導入の進展につれて,通信回線でつないだネットワーク化も急速に進んでいる。82年10月にデータ通信回線の第2次開放が実施されたことは,こうした動きに一段と拍車をかけている。電電公社(現NTT)によるデジタルデータ交換ネットワーク(DDX)の利用も急増している。またVAN(付加価値通信網)の利用も今後進むものと予測される。
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ASCII.jpデジタル用語辞典 の解説

オフィスオートメーション

オートメーション」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のオフィスオートメーションの言及

【オートメーション】より

…また各事業所の設備を電話線でつないでネットワークを形成することも容易である。こうした形の事務機械化や情報処理ネットワークを工場との対比でオフィス・オートメーションとかビジネス・オートメーションとか呼ぶことが流行しているが,前項と同じく時代の流れに沿った用語法であり,厳密なものではない。
[オートメーションの社会的影響]
 オートメーションは,たとえ一部分の工程に適用される場合であっても,生産過程における人間の役割の排除をその本質とするものであるから,当然人間の労働のありかたと,労働を基礎とした人間の社会生活のありかたに大きな影響を与えるものであり,初期からその問題をめぐって,はげしい議論がたたかわされた。…

※「オフィスオートメーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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