デジタル大辞泉
「慕」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
した・う したふ【慕】
〘他ワ五(ハ四)〙
① あとを追う。
(イ) 恋しく思ってあとを追う。離れがたい思いであとを追う。また、去るものを愛惜する。
※
万葉(8C後)五・七九四「しらぬひ
筑紫の国に 泣く児なす 斯多比
(シタヒ)来まして」
※
徒然草(1331頃)一三七「花の散り、月の傾くをしたふならひはさる事なれど」
(ロ) 逃げる者などのあとを追う。追跡する。〔上杉家文書‐(天正六年)(1578)六月三日・上杉定勝自筆古案集・上杉景勝書状写〕
※
随筆・
戴恩記(1644頃)上「但かやうのおちめを見て、わがあとをしたひてうたんと思はれば、かへりて武勇のよはきに似たり」
② 恋しく思う。会いたいと思う。離れがたく思う。
※
出雲風土記(733)仁多「その時、玉日女命、石を以ちて川を塞
(さ)へましければ、え会はずして恋
(した)へ
りき。故
(かれ)恋山
(したひやま)といふ」
※新古今(1205)羇旅・九八八「思ひおく人のこころにしたはれて露分くる袖のかへりぬる哉〈西行〉」
③ 徳やすぐれた行ないを範として、それにならおうとする。範とすべき
物事について学ぶ。
手本とする。
※大慈恩寺三蔵
法師伝永久四年点(1116)五「
弟子、法師の徳を慕
(シタヒ)重むす」
④ (自動詞的に用いる) 物が離れなくなる。付着する。
※歌舞伎・丹波与作手綱帯(1693)一「大角太刀抜き見給ひ、是は刀に血(のり)が慕うてある」
⑤ ほしいと思う。
※
古事談(1212‐15頃)五「小大進所
レ生子息八人。皆女子也。仍慕
二男子一人
一之間」
したわし・い したはしい【慕】
〘形口〙 したは
し 〘形
シク〙 (動詞「したう(慕)」の
形容詞化)
① 心がひかれて、なつかしく、また、恋しく思う。
※
平家(13C前)二「あまりにした
はしくおぼゆるに、しばししばし」
※徒然草(1331頃)二二「
何事も、古き世のみぞしたは
しき」
② まだあまり親しくない人に、心ひかれてあこがれる
気持を表わす。
※
人情本・閑情末摘花(1839‐41)初「アノ娘
(こ)が今の
心操(こころいき)を聞て見ると猶々慕
(シタ)はしくなるやうだ」
したわし‐げ
〘形動〙
したわし‐さ
〘名〙
しと・う しとふ【慕】
〘他ハ四〙 「したう(慕)」の変化した語。
※
仮名草子・恨の介(1609‐17頃)上「恨の介思ひけるは、ここにて
月日は過ぎじ、御帰りさをしとひなんと思ひ」
したわし したはし【慕】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報