精選版 日本国語大辞典 「忌・斎・諱」の意味・読み・例文・類語
い・む【忌・斎・諱】
[1] 〘他マ五(四)〙
① (主に呪術的な信仰上のことについて) 身を浄め慎んでけがれを避ける。禁忌とする。忌みきらう。
② ある物が他の物のそばにあったり、いっしょになったりすることを禁忌とする。特に漢方で、ある薬が他の物質とまざり合うことを、効能が落ちるとして避けること。
③ はばかる。憎む。嫌悪する。「不正を忌む」
④ 何らかの理由で、特定の文字や言葉を使用することを避けて、他のものに代える。
※史記抄(1477)一二「始皇の父の諱が楚ぢゃほどに、忌て荊と云ぞ」
[2] 〘自マ五(四)〙
① けがれを避けて身を浄め慎む。禁忌を避けてひきこもり、身を清浄に保つ。
② (「いむこと」の形で用いられる例が多い) 仏の戒を受ける。受戒する。
いみ【忌・斎・諱】
[1] 〘名〙 (動詞「いむ(忌)」の連用形の名詞化)
① 神聖に対する禁忌。心身を清浄に保ち、けがれを避け慎むこと。斎戒。
※書紀(720)持統五年二月(北野本室町時代訓)「卿等(いましたち)、天皇の世(みよ)に、仏殿・経蔵を作りて、月ごとの六(むより)の斎(イミ)を行へり」
② (①から転じて) 忌み避けるべきだとされていること。遠慮があること。はばかるべきこと。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「いかで対面給はらん、いみなき身なりせば、そのわたりにこそは物せめ」
※源氏(1001‐14頃)絵合「事のいみあるは、こたみは奉らじ」
※大和(947‐957頃)九四「故中務の宮の北の方うせ給ひてのち〈略〉御いみなどすぐしては」
※蜻蛉(974頃)中「いとつれづれなるを、いみもたがへがてら、しばしほかにとおもひて」
⑥ 「いみだけ(斎竹)」の略。
※六百番歌合(1193頃)夏上「今日祭る神の恵はかねてより卯月のいみのさして知りにき〈藤原季経〉」
[2] 〘語素〙 けがれを清めた。神聖な。「忌服屋(いみはたや)」「斎殿(いみどの)」など。
[語誌]「物忌み」「方忌み」などの語が平安時代から見られ、陰陽道の浸透によって、日常生活においてもさまざまな「忌み」が行なわれた。
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