牡丹(読み)ぼたん

精選版 日本国語大辞典 「牡丹」の意味・読み・例文・類語

ぼ‐たん【牡丹】

〘名〙
ボタン科の落葉低木。中国原産で、古く日本に渡来し、観賞用として庭に植えられる。高さ〇・六~一・八メートル。葉は二回羽状複葉で有柄。各小葉は卵形披針形で二~三裂する。春、梢上に径二〇センチメートルぐらいの大形の重弁花を一個つける。花は紅・紅紫・黒紫・桃・白色などで変化が多い。根皮は頭痛、関節炎、リウマチ、婦人病などの薬として煎服(せんぷく)される。漢名、牡丹。はつかぐさ。ふかみぐさ。なとりぐさ。やまたちばな。ぼうたん。ぼうたんぐさ。《季・夏》
▼ぼたんの芽《季・春》
※菅家文草(900頃)四・法花寺白牡丹「色即為貞白、名猶喚牡丹」 〔白居易‐惜牡丹花詩〕
② 襲(かさね)の色目の名。表は白、裏は紅梅。また、女房の衣の場合は表は薄蘇芳、裏白四月に用いる。ぼうたん。
※俳諧・滑稽雑談(1713)四月「ぼたんの衣 表白、裏紅梅、かさねもあるべし」
③ 紋所の名。①の花を種々にあしらったもの。裏牡丹、津軽牡丹、近衛牡丹、杏葉牡丹など種々ある。
太平記(14C後)一七「牡丹の旗、扇の旗、只二流れ差揚て」
④ (「獅子に牡丹」の「獅子」を「猪(いのしし)」にとりなしていう) 猪肉の異称。
※歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)四立「牡丹(ボタン)といへば看板に、偽りのねえ吸ひ物の、一杯くはせたこの獣物
遊女
※雑俳・銀土器(1716‐36)「地女房を唯きたながる牡丹好」
花札六月を表わす札。牡丹に蝶の図柄の一〇点札、牡丹に短冊の五点札各一枚と、一点札二枚がある。

ぼう‐たん【牡丹】

〘名〙
① =ぼたん(牡丹)①《季・夏》
※能因本枕(10C終)一四六「露台の前に植ゑられたりけるほうたんの、唐めきをかしき事」
満佐須計装束抄(1184)三「ぼうたん おもてみなうすきすはう。うらみなしろし。すずしのひとへ」
御所女中小袖。練貫(ねりぬき)金銀の箔(はく)絵模様を置き、また繍(ぬい)をして、赤い裏をつけたもの。
※簾中旧記(1521頃か)「四月には、ぼうたんと申物めし候」

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デジタル大辞泉 「牡丹」の意味・読み・例文・類語

ぼ‐たん【×牡丹】

ボタン科の落葉低木。高さ1~2メートル。葉は大きく、羽状複葉で、互生する。5月ごろ、白・紅・紫・黄色などの大形の花が咲く。花びらは5~8枚あるが、重弁や二段咲きなどさまざまな園芸品種があり、寒牡丹もある。根皮を漢方で女性の浄血薬などに用いる。中国の原産で、古くから栽培。花の王とよばれ、二十日草はつかぐさ深見草ふかみぐさ名取草なとりぐさなどの異称もある。ぼうたん。 夏》「―散りてうちかさなりぬ二三片/蕪村
紋所の名。1の花や葉・枝などを図案化したもの。種類が多い。
かさねの色目の名。表は白、裏は紅梅。女房の衣では、表は薄い蘇芳すおう、裏は白。ぼうたん。
《「獅子ししに牡丹」の「獅子」を「しし」にとりなしていう》イノシシの肉。

ぼう‐たん【×牡丹】

ぼたん(牡丹)1」に同じ。 夏》「―やしろがねの猫こがねの蝶/蕪村
ぼたん(牡丹)3」に同じ。
御所の女中の小袖練貫ねりぬきの地に、金銀の箔で模様を描くかまたは縫い取りをして、赤い裏をつけたもの。

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「牡丹」の解説

ぼたん【牡丹】

いのししの肉。◇肉食が禁じられていた近世の隠語。「獅子に牡丹」の獅子をいのししに置き換えたもの。「ぼたん肉」ともいう。

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「牡丹」の解説

牡丹 (ボタン・ボウタン)

学名:Paeonia suffruticosa
植物。ボタン科の落葉低木,園芸植物,薬用植物

牡丹 (ボタン)

植物。スベリヒユ科の一年草,園芸植物。マツバボタンの別称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

普及版 字通 「牡丹」の読み・字形・画数・意味

【牡丹】ぼたん

ぼたん。

字通「牡」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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