広・拡(読み)ひろがる

精選版 日本国語大辞典 「広・拡」の意味・読み・例文・類語

ひろが・る【広・拡】

〘自ラ五(四)〙
① 広くなる。
(イ) 面積・範囲が大きくなる。
日葡辞書(1603‐04)「クチガ firogaru(ヒロガル)
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉六「やや勢を得て燃え出し、〈略〉遂に林一面にひろがれり」
(ロ) 行動、生活の範囲、物事の影響などが大きくなる。「つき合いが広がる」
※ガトフ・フセグダア(1928)〈岩藤雪夫〉二「経験に追ひつめられて何うにもあがきの取れなかった自分の世界が静かに展(ヒロ)がって行くのを」
(ハ) たたんであるもの、閉じてあるものが開く。また、先の方が広くなる。
太平記(14C後)一六「上差の流鏑矢(かぶらや)を抜いて、羽の少し広(ヒロ)がりけるを鞍の前輪に当てかき直し」
同類のものが広い範囲にいきわたる。普及する。はびこる。蔓延(まんえん)する。
※交隣須知(18C中か)四「盛 サカリテ スサマシウ ヒロガッタト云マスル」
※やみ夜(1895)〈樋口一葉〉五「夏草処得がほにひろがれば」
③ ある広さを占める。
※彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉一「東西七キロ余り、南北六キロ足らずの平地にひろがる村である」
④ 開合の開音の発音をする。
※玉塵抄(1563)四一「ここらにはひろがってりゃうとよむぞ。ここはすぼめてれうとよむぞ」
[補注]「ひろげる」に対応する自動詞であるが、中世以前は、「ひろごる」であった。

ひろ・げる【広・拡】

〘他ガ下一〙 ひろ・ぐ 〘他ガ下二〙
① たたんだり閉じたりしてあるものを延べ開く。
※百法顕幽抄平安中期点(900頃)「是の如く尊者即ち座具を展(ヒログル)時に」
※枕(10C終)二三「草子をひろげさせ給ひて」
② 範囲・規模を大きくする。「門を広げる」「手を広げる」などの形で、繁栄させる、拡張発展させるなどの意で用いる。
源氏(1001‐14頃)薄雲「なほこの門ひろげさせ給ひて、侍らずなりなむ後にも、かずまへさせ給へ」
③ 同類の物を広い範囲にいきわたらせる。
(イ) 物を一面に置く。散らす、散乱させるなどの意でもいう。
※源氏(1001‐14頃)紅葉賀「所せきまで遊びひろげ給へり」
(ロ) 普及させる。はびこらせる。
草枕(1906)〈夏目漱石〉一「王維淵明境界を今の世に布教して広げやうと云ふ心掛も何もない」
④ 新たに展開する。繰り広げる。始める。
田舎教師(1909)〈田山花袋〉一「清三の前には、新しい生活がひろげられて居た」

ひろご・る【広・拡】

〘自ラ四〙
① 物が広くなる。面積・範囲が大きくなる。閉じてあるものなどが開く。ひろがる。
※宇津保(970‐999頃)蔵開中「後向き給へる御髪の〈略〉九尺ばかり有るを繰り出で給へれば、一御座(おまし)ひろごりていとめでたし」
② 同類の物が広い範囲にいきわたる。はびこる。数や勢力が増える。ひろがる。
大和(947‐957頃)一二〇「種みなひろごり給ひて、かげ多くなりにけり」
※源氏(1001‐14頃)若菜上「うちうちに宣はする御ささめきごとどもの、おのづからひろこりて」

ひろ・ぐ【広・拡】

[1] 〘自ガ四〙 ひろがる。延び開ける。
平治(1220頃か)下「左右手足をもて竿をひろがせ」
[2] 〘他ガ四〙 (「する」「行なう」の意で、相手をののしっていう) しやがる。しおる。
※寒川入道筆記(1613頃)愚痴文盲者口状之事「又うつけをひろぐよとしかり候へば」
[3] 〘他ガ下二〙 ⇒ひろげる(広)

ひろがり【広・拡】

〘名〙 (動詞「ひろがる(広)」の連用形の名詞化) 面・空間が広くなること。物がある空間に広く位置を占めること。また、広がる度合や、ある広さを持った場所。〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉二「半滴のひろがりに、一瞬の短かきを偸んで」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android