蔓延(読み)はびこる

精選版 日本国語大辞典 「蔓延」の意味・読み・例文・類語

はびこ・る【蔓延】

〘自ラ五(四)〙
草木などが、のびひろがる。ひろがり茂る。
※斎宮女御集(985頃か)「はびこれる葛の下ふく風の音も誰れかは今は聞くべかりける」
※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石〉須永の話「蒼黒い藻草が限りなく蔓延(ハビコ)ってゐた」
② 物が満ちて一杯になる。充満する。→はばかる(憚)
書紀(720)顕宗二年一〇月(図書寮本訓)「百姓殷(さか)りに富めり。稲(いね)(さか)に、銀銭一文。牛馬野に被(ハヒコレ)(〈別訓〉ほとこれ)り」
滑稽本・古朽木(1780)二「町々にはびこれる酒屋の数」
③ 勢いが盛んになって広まる。ひろまり栄える。また、のさばる。威勢をふるう。蔓延する。跳梁する。→はばかる(憚)
太平記(14C後)一一「一類天下にはびこりて、威を振ひ」
※奉教人の死(1918)〈芥川龍之介〉一「長崎の町にはびこった、恐しい熱病にとりつかれて」
[補注]「虎明本狂言・宗論」に法華僧が「日本にはびこる程のほうもん法文)じゃ程に」と言うと浄土僧が「三国にはばかるほどのほうもんじゃよ」と言い返す例があるように、「はびこる」と「はばかる」は、室町時代から江戸時代にかけて、用法上、重なるところがあった。

ほびこ・る【蔓延】

〘自ラ四〙 いっぱいに広がる。はびこる。
万葉(8C後)一八・四一二三「この見ゆる雲保妣許里(ホビコリ)てとの曇り雨も降らぬか心足ひに」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「蔓延」の意味・読み・例文・類語

まん‐えん【×蔓延/××衍】

[名](スル)つる草がのび広がること。病気悪習などがいっぱいに広がること。「ペストが―する」
[類語]はびこるのさばる広がる流行猖獗しょうけつ跋扈ばっこ跳梁ちょうりょう横行流布伝播浸透波及弥漫びまん広まる行き渡る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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