大童(読み)オオワラワ

デジタル大辞泉 「大童」の意味・読み・例文・類語

おお‐わらわ〔おほわらは〕【大童】

[名・形動]
2原義》一生懸命になること。夢中になってことをすること。また、そのさま。「記念式典の準備大童な役員たち」
まげの結びが解けて髪がばらばらになっていること。また、そのさま。童は髪を結ばなかったところから、大きな童の意でいい、多く、ざんばら髪で奮戦するさまに用いる。
「石切といふ太刀ぬいて―になり」〈平治・下〉
[類語]命懸け必死死に物狂い捨て身懸命躍起決死不惜身命ふしゃくしんみょう大車輪八面六臂一所懸命一生懸命全力総力死力渾身入魂全身全霊目まぐるしい忙しいせわしいせわしない気ぜわしい慌ただしいきりきり舞い東奔西走てんてこ舞い多忙繁忙繁多繁劇多事多端多用繁用席の暖まるいとまもない猫の手も借りたいそそくさせかせか性急拙速多端忙殺怱忙そうぼう倥偬こうそう怱怱そうそう大忙し取り紛れる手が塞がる目が回る応接にいとまがないあくせくこせこせばたばたせっかちあたふた気早気早い貧乏暇無し甲斐甲斐かいがいしいそわそわ右往左往慌てふためく動き回るちょこまかうそうそ倉卒押せ押せてんやわんややいのやいの

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精選版 日本国語大辞典 「大童」の意味・読み・例文・類語

おお‐わらわ おほわらは【大童】

〘名〙
① 年長者で理髪をせず、加冠しないままに幼童の風を残している姿。
古事談(1212‐15頃)二「長季は宇治殿若気也。仍大童まで不首服云々」
② (形動) 髪の結びが解けて、乱れ垂れること。武士戦場で兜を失い、髪を頬や肩に垂らした姿になること。乱髪。また、物がそのように乱れたさま。童はもと髪を結ばなかったので、大きな童の髪の意からいう。
※平治(1220頃か)中「冑も落ちて大わらはになり給ふ」
③ (形動) 事に臨んでいっしょうけんめいに活動するさま。夢中になって事をすること。
※玉塵抄(1563)三二「髪を打みだいて、大わらわになって祭りをないたぞ」
※月は東に(1970‐71)〈安岡章太郎〉二「検査のすんだ荷物を大童(オオワラワ)スーツケースに詰めこんで」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大童」の意味・わかりやすい解説

大童
おおわらわ

髻(もとどり)を解いた髪。肩のあたりまで垂れたさまが、童の髪姿に似ているところからいう。室町末期に来日したキリスト教宣教師は、vōuaraua「髪はばらばらに解け、着物はしまりなくはだけなどして、身なりの乱れている」(『日葡(にっぽ)辞書』)と認識しているが、次の三つの使い分けがみられる。(1)年長者の理髪しない若風の髪形。「長季は宇治殿若気也。仍(すなわち)大童まで不加首服云々」(『古事談』)。(2)軍記物語などで、奮戦する武者姿の描写によく用いられている。「鎧(よろい)の草摺(くさずり)かなぐり捨て、胴ばかり着て、大童になり、大手を広げて立たれたり」(『平家物語』「能登殿最期」)。(3)転じて、一心不乱に物事に打ち込むさまをいう。「三人とも大童になつて、おもしろさうに飲み始め」(尾崎紅葉『二人女房』)、「漁師町では例年通りその準備に大童だったが」(吉村昭(あきら)『戦艦武蔵(むさし)』)。

[岡田袈裟男]

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世界大百科事典(旧版)内の大童の言及

【成年】より

…元服以前の男子年少者はなにもかぶらず,頂(いただき)を露(あら)わしたままでいた。これを童(わらわ)といい,年齢的には成長していても,加冠の式を経ない者は大童(おおわらわ)と呼んで,一人前とはみなされなかった。成年式は平安朝の宮廷貴族における通過儀礼の中でも特に重要視され,最も厳粛かつ盛大な儀式によって行われ,文学作品では男女ともに〈大人になる(なす)〉という表現を用いている。…

※「大童」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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