吉野紙(読み)ヨシノガミ

デジタル大辞泉 「吉野紙」の意味・読み・例文・類語

よしの‐がみ【吉野紙】

吉野地方産の、コウゾ原料とした薄手の和紙奈良紙の流れをくみ、江戸時代、漆をすのに用いたことから漆漉しともよばれた。やわら紙。やわやわ。

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精選版 日本国語大辞典 「吉野紙」の意味・読み・例文・類語

よしの‐がみ【吉野紙】

〘名〙 奈良県吉野地方から産する楮(こうぞ)紙。薄く柔らかいので化粧紙漆漉しなどに用いられた。薄いもののたとえにもいう。やわら紙。吉野。
※鈴鹿家記‐応永元年(1394)一二月二九日「御内儀様へ吉野紙二束宛上る」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉野紙」の意味・わかりやすい解説

吉野紙
よしのがみ

大和(やまと)国(奈良県)の吉野地方で漉(す)かれる和紙の総称。この地方の紙漉きは、大海人皇子(おおあまのおうじ)(後の天武(てんむ)天皇)が村人に教えたのに始まるとの伝説があるほど古く、奈良紙の伝統が国中(くんなか)(大和平野)からしだいに山中(さんちゅう)(吉野川上流)へ移ってきたものである。室町時代に上質の雑用紙であった奈良紙は、やわら紙として名高く、また江戸時代になってからは吉野の国栖(くず)(国樔とも書く)や丹生(にう)で漉かれた同質の薄紙が、漆漉(こ)しの名で世に知られた。薄くてじょうぶなため、その名のとおり漆や油を漉すのに適し、また美しいために装飾品や菓子などの包み紙にも重宝された。同質の紙には紀伊国(和歌山県)の音無(おとなし)紙、美濃(みの)国(岐阜県)や土佐国(高知県)の典具帖(てんぐじょう)、羽前国(山形県)の麻布(あさぶ)紙などがあり、これらはごく薄手の代表的な楮紙(こうぞがみ)である。吉野郡ではこのほかに、宇陀(うだ)紙という厚手の楮紙や、三栖(みす)紙という薄紙など多くの種類の和紙が漉かれたが、これらを総称して吉野紙という。谷崎潤一郎小説吉野葛(くず)』に吉野紙の紙漉き村の描写があるように、現代も国の文化財保存技術者に指定された少数の漉き家に、伝統技術が受け継がれている。

[町田誠之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉野紙」の意味・わかりやすい解説

吉野紙
よしのがみ

吉野 (奈良県) に産する薄葉の和紙。製法は,コウゾの白皮をわら灰のあくで煮熟し,たたき砕いてから布を張った籠に入れ,流水中に浸してさらし,漉槽に移して糊を混ぜてすく。色が白く,宝石,貴金属などの包装や漆や油をこすのに用いられる。大きさは縦8寸 (1寸=3.03cm) ,横 1.6寸で,そのため吉野地方ではこの紙を「八寸」と呼んでいる。

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デジタル大辞泉プラス 「吉野紙」の解説

吉野紙

奈良県吉野郡吉野町で生産される和紙。「吉野和紙」のひとつ。原料はコウゾ。簀伏せの手法を用いるため柔らかく、漆を濾すのに用いた。「和良(やわら)」「柔紙(やわらがみ)」「やわやわ」などともいう。

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百科事典マイペディア 「吉野紙」の意味・わかりやすい解説

吉野紙【よしのがみ】

奈良紙

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世界大百科事典(旧版)内の吉野紙の言及

【奈良紙】より

…広義には奈良地方ですかれた紙をいうが,狭義には同県南部ですかれる吉野紙(楮紙(こうぞがみ))を指す。奈良時代には中央に製紙所が設けられ,大量の大和の紙が存在していたと思われるが,詳細は不明である。…

※「吉野紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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