麻布
あざぶ
東京都港区中西部、北は青山、北東は六本木に接する一地区。東麻布、西麻布、元麻布、麻布十番、南麻布などからなる。また、1947年(昭和22)までは旧麻布区の一部であった。かつてアサを栽培し、布を織った地であることが地名の由来で、慶長(けいちょう)年間(1596~1615)には、麻布の原とよばれた。また、阿佐布、阿佐婦とも書かれた。山手(やまのて)台地の一部を占め、江戸時代は大名屋敷地や寺社地に利用されたが、明治以後は高級住宅地やドイツ、フランス、スイスなど、外国大使館の用地へと変わった。旧南部(なんぶ)(盛岡)藩屋敷地跡は、有栖川宮(ありすがわのみや)家の用地になり、現在は有栖川宮記念公園、都立中央図書館となっている。台地は多くの侵食谷で刻まれ、台地上の広い住宅地と対照的に狭い谷は住宅が密集している。南部坂、狐(きつね)坂、暗闇(くらやみ)坂など坂が多く、地形の変化が著しい。首都高速道路都心環状線、2号線、3号線のほか、東京地下鉄日比谷(ひびや)線、南北線、都営地下鉄大江戸線が通っている。
[沢田 清]
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あざぶ【麻布】
[1] 東京都港区内の地名。麻を栽培して布を作った
土地であったため呼ばれたといわれる。江戸中期から武家屋敷が多く建ち、明治時代以降外国の
公館や高級住宅地として発達。阿佐布。浅生。
[2] 〘名〙 (形動) (「麻布で気が知れぬ」から) 本心がわからないこと。また、その人。
※談義本・根無草(1763‐69)二「御性質(うまれつき)甚きゃんにてましませば、何事も麻布(アザブ)にて、様々どうらくをなし給ふ」
あさ‐ぬの【麻布】
※続日本紀‐神護景雲元年(767)一〇月癸巳「献二銭百万、紵布一百端一」
※浮世草子・日本永代蔵(1688)五「女は麻布(アサヌノ)を織延(をりのべ)」
あさ‐ふ【麻布】
〘名〙
大麻、
苧麻(からむし)、綱麻
(つなそ)、
亜麻などを材料にした布。特に夏用の着衣その他に使われる。《季・夏》
※俳諧・年浪草(1783)夏「麻布葛布藤布等之未レ曝者曰二生平一」
ま‐ふ【麻布】
〘名〙 麻糸で織った布。あさぬの。〔後漢書‐東夷伝・
挹婁〕
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麻布【あざぶ】
東京都港区の旧麻布区地域。武蔵野台地末端の麻布台に当たり,坂や谷が多い。元麻布,西麻布,南麻布,六本木などに分かれ,高級住宅,外国公館が多い。南側を流れていた古川は埋め立てられ首都高速道路が通じ,旧河谷沿いには機械,染色の小工場が散在。有栖川宮(ありすがわのみや)記念公園がある。
→関連項目芝|港[区]
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麻布
あざぶ
東京都港区西部にある地区。地名の由来は,昔,アサを栽培し,布を織った土地であることによる。山手台地の南東部を占め,起伏に富む。台地上には高級住宅地や外国公館が多い。麻布十番地区の古川の谷は,古くから東京旧市内の繁華街として知られた商業地。
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デジタル大辞泉
「麻布」の意味・読み・例文・類語
あざぶ【麻布】
東京都港区の地名。江戸時代は大名屋敷・寺社が、明治以降は外国の公館が多い。もと東京市の区名。
ま‐ふ【麻布】
あさ‐ぬの【麻布】
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あざぶ【麻布】
東京都港区南西部一帯の地区名。明治初期までは渋谷区の広尾あたりまでを含んでいた。1878年東京府15区の一つ,1932年東京市35区の一つとなり,47年赤坂,芝の2区と合併して東京都23区の一つ港区が成立し,その一部となった。標高20~30mの武蔵野(山手)洪積台地の一部で,日下窪(ひがくぼ),谷町など多くの開析谷があり,鳥居坂,永坂,芋洗坂,笄(こうがい)坂,仙台坂など坂の多い所として有名である。
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麻布
あざぶ
日清・日露の戦争前後から隣接する赤坂とともに軍都の一部、軍隊の街として変貌した地域。首都東京は軍部の本拠地でもあり、陸軍の中枢機関が集中していたが、明治一九年(一八八六)師団司令部条例により帝都と近隣諸県の守備を目的とした第一師団(前身は第一軍管東京鎮台)、同二三年の近衛師団条例により皇城の守備や行幸啓の警備にあたる近衛師団(前身は近衛)の二師団が配置された。日清・日露の戦争期に対外戦準備のため軍備拡張を相ついで実施、師団と旅団も全国的に大拡張されたが、明治末年の東京には第一師団管下に第二歩兵連隊・第一騎兵連隊・第一砲兵連隊、近衛師団管下に第四歩兵連隊、第一騎兵連隊・第一砲兵連隊が在営。
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世界大百科事典内の麻布の言及
【アマ(亜麻)】より
…亜麻繊維からの織物(リネンlinen。リンネルともいう)は麻布と呼ばれ,汗を吸い,またそれをすぐに発散させるので,夏用の服地として利用する。感触がよいので,乳児や婦人用の肌着,ハンカチーフ,ナプキン,テーブルクロス,シーツなどにする。…
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