口付(読み)くちつき

精選版 日本国語大辞典 「口付」の意味・読み・例文・類語

くち‐つき【口付】

〘名〙
① 口の形。口もとの様子。
落窪(10C後)一「口つき愛敬(あいぎゃう)づきて、少しにほひたる気(け)つきたり」
② ものの言い方。しゃべり方。また、うたい方。
源氏(1001‐14頃)帚木「掻い弾く爪音、手つきくちつき、皆たどたどしからず」
牛馬などの口の先について、これを引く人。口取り。馬丁(ばてい)
※宇津保(970‐999頃)国譲下「車のくちつきども、装束整へ」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)殺生石「口附のをのこ、短冊得させよと乞ふ」
吸い口が付いていること。また、そういうタバコ
※明治大正見聞史(1926)〈生方敏郎政府の恐露病と日露戦争「菊世界、日の出常盤といふやうな口付の巻煙草が生れ」

くち‐づけ【口付】

〘名〙
① 言いなれること。口ぐせ。
※七十一番職人歌合(1500頃か)七一番「いつまでか待宵ごとの口つけにあすやあすやといふをたのまむ」
② (kiss訳語。「くちつけ」とも) 唇(くちびる)を他の人の唇、また頬などにつけること。接吻。キス。
※引照新約全書(1880)馬太伝福音書「我が接吻(クチツケ)する者は夫(それ)なり」
※星(1896)〈国木田独歩〉「詩人の優しき頬に交る交る接吻(クチヅケ)して」
③ 口をつけること。飲むこと。
※駅夫日記(1907)〈白柳秀湖〉一七「憐れなる乙女は切なる初恋の盃に口つけする間もなく」
[補注]②は、明治初年の新約聖書翻訳委員による訳語という。

くち‐づ・く【口付】

[1] 〘自カ四〙
① 口に言いなれる。口ぐせとなる。
※十訓抄(1252)六「皆人口つきたる物語なれば、委(くは)しく書き述ぶるに及ばず」
② ことばをしゃべりはじめる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 以前には食べられなかったものが、しだいに食べられるようになる。ある食物が口に慣れる。
雑談集(1305)三「其れより御口(クチ)づきて物まゐりけり」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒くちづける(口付)

くち‐づ・ける【口付】

〘他カ下一〙 くちづ・く 〘他カ下二〙
① 口ぐせに言う。言いならす。
※発心集(1216頃か)七「常はかの浄心信敬不生疑惑者の文を口付け、ことぐさとせり」
② 他のものに唇をつける。接吻する。
※続女ひと(1956)〈室生犀星〉女ごのための最後の詩集・とらへられざるままに「ちがった顔とすがたの、おんがくが接吻(クチヅケ)られないごとく」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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