精選版 日本国語大辞典 「殺生石」の意味・読み・例文・類語
せっしょう‐せき セッシャウ‥【殺生石】
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能の曲名。五番目物。作者不明。佐阿弥作ともいう。シテは妖狐の霊。玄翁(げんのう)という僧(ワキ)が下野の那須野を通りかかると,巨石があってその上空を飛ぶ鳥が落ちてくる。そこへどこからともなく女(前ジテ)が現れて,石の付近は危険だと声を掛け,石の由来を語って聞かせる。むかし宮中に学芸優れた美女がいて,なにを尋ねても曇りなく答えたので,玉藻前(たまものまえ)と名付けられたという。ある夜秋風に灯火が消えたとき,玉藻前の体から光を発して宮中を照らしたが,それ以来帝は病となった。占いをさせると,玉藻前は化生(けしよう)の者とわかったという(〈クセ〉)。その玉藻前がのちに那須野に逃げて来て,この巨石の石魂になったのだと女は言い,自分こそ実はその石魂なのだが,夜になったら真実の姿を見せようと言って,石の中に消え去る。僧が仏事を営むと,石が二つに割れて妖狐の姿(後ジテ)が現れる。妖狐は,天竺(てんじく)・唐土・日本と三国に渡って王朝に危害を加えてきたのだった。この野で武士たちに討たれた後は,石魂となって人畜に害を加えていたのだが,今の仏事のおかげで悪心が去ったので,この後は悪事を行わないと約束し,その姿は消え失せる(〈中ノリ地〉)。クセと中ノリ地が中心。作り物の石が二つに割れて後ジテの姿が現れるのが特色だが,作り物を出さない演じ方もある。また変形の演出では,後ジテを女体とすることもある。人形浄瑠璃《玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)》などの原拠である。
執筆者:横道 万里雄
火山や温泉,地熱地帯では,噴気孔から噴出する硫化水素,亜硫酸ガス,炭酸ガスなどのために近寄った鳥や虫が死ぬことがあり,ときに人も死ぬこともあるが,その噴気孔の付近の岩石を俗に殺生石と呼ぶことがある。那須温泉,大分県の大船山,久住(くじゆう)山などにある。なかでも那須湯本の北200mにある殺生石は九尾狐の玉藻前(たまものまえ)伝説として広く知られている。松尾芭蕉は《おくのほそ道》にその光景を〈石の毒気いまだほろびず。蜂蝶のたぐひ,真砂の色の見えぬほどかさなり死す〉と記している。この伝説は能をはじめとして講談や人形浄瑠璃,歌舞伎などに早くから取り入れられている。有毒ガスが発生する原因を岩石自体にあると考えたところからこの種の言い伝えが成立したのであろう。なお愛知県村積山頂や岡山県真庭市の化生寺(かせいじ)には那須の殺生石の破片が飛来したという石がある。これに触れると病気になるとか死ぬといわれていて,近づく者はないという。
執筆者:村井 勇+戸塚 ひろみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…鳥羽法皇の寵姫(ちようき)玉藻前は,天竺(てんじく)と中国において,婬酒によって王を蕩(とろか)し,すこぶる残虐な所行や悪の限りをつくした果てに,日本に飛来した金毛九尾(きゆうび)の狐の化身であった。この妖狐は,陰陽師安倍泰成に正体を見破られ,那須野に逃げるが射殺され,その霊は石と化して近寄る人や鳥獣を殺す殺生石(せつしようせき)になったという。のちに玄翁(げんのう)和尚の法力で,妖狐の精魂は散滅させられた。…
… 山麓には温泉が多数湧出し,東麓の那須湯本,弁天,大丸(おおまる)などの温泉と西麓の三斗(さんど)小屋温泉,南麓の板室温泉が那須温泉郷を形成している。湯本温泉集落北西に隣接する殺生石は芭蕉の《おくのほそ道》にも記され,今でも硫化水素を放出し温泉が湧出する。この温泉が湯川に流入して,この川を酸性にしている。…
※「殺生石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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