ウトウ(読み)うとう(英語表記)hornbilled puffin

改訂新版 世界大百科事典 「ウトウ」の意味・わかりやすい解説

ウトウ (善知鳥)
hornbilled puffin
rhino ceros auklet
Cerorhinca monocerata

黒褐色の大型のチドリ目ウミスズメ科の鳥。アムール川下流域沿岸サハリン,朝鮮半島,日本北部,アラスカ南部,カナダ西海岸などで繁殖し,冬は少し南へ移動する。日本では北海道と本州北部で繁殖し,冬は本州中部や対馬にも出現する。全長約37.5cm。体の上面は黒褐色,のどから胸,わきは灰黒色で腹は白く,夏羽では眼の後方くちばしの基部からそれぞれ白色の飾羽が出る。くちばしは縦に平たく,橙色で,上くちばしの基部近くには紫白色の突起がある。冬羽では白い飾羽やくちばしの突起はなくなる。脚は黄白色。夏には繁殖地に近い海にいて,潜って魚やイカを食べる。日中は海上で生活し,夕方,くちばしいっぱいに魚を横にくわえて巣に戻る。秋冬には海上で生活する。海に面した断崖の緩く傾斜した草地に1~2mの深さの穴を掘って中に1腹1卵を産む。抱卵日数は約21日。雛は綿羽に包まれ,40~50日間親鳥の保育を受ける。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウトウ」の意味・わかりやすい解説

ウトウ
Cerorhinca monocerata; rhinoceros auklet

チドリ目ウミスズメ科。全長約 38cmの海鳥頭上,背,,尾は暗褐色で,顔,喉,胸,脇腹が灰褐色,腹は白い。は橙色。趾(あしゆび)には蹼(みずかき)がある。雌雄とも繁殖期には上嘴の基部上に三角形の突起があるほか,眼と嘴の後方に伸びる 2条の白色の飾り羽がある。冬羽(→羽衣)のときには嘴の突起と飾り羽はない。冬季には沖合いでも沿岸海域でも暮らすが,繁殖期には海岸の崖地や沿岸の島の草地の斜面などに 1~5mの深い穴を掘り,集団で営巣する。北太平洋の海上に生息し,潜水してイカナゴオキアミ,イカなどをとる。水深 60mまでもぐったという記録がある。日本では北海道天売島,大黒島,松前小島岩手県椿島宮城県の江ノ島列島などで繁殖している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウトウ」の意味・わかりやすい解説

ウトウ
うとう / 善知鳥
hornbilled puffin
rhinoceros auklet
[学] Cerorhinca monocerata

鳥綱チドリ目ウミスズメ科の海鳥。全長37.5センチメートル。頭から尾までの背面は黒褐色、腹は白色。夏羽では顔に2条の飾り羽がある。嘴(くちばし)は橙(だいだい)色で、夏羽では基部に上方に向いた突起がある。雌雄同色。太平洋の寒帯沿岸にすんでおり、カリフォルニアから日本まで分布している。日本では本州北部や北海道の離島で繁殖するものがあり、宮城県女川(おながわ)湾沖の江の島、北海道の天売(てうり)島などはよく知られた集団繁殖地である。地中に1メートルほどの横穴を掘り、枯れ草を敷き、汚白(おはく)色地に淡褐色や灰青色の斑(はん)や条斑のある1卵を産む。北海道ではケントガモともよばれる。「うとう」とはアイヌ語で「突起」の意で、東北地方では海岸に突出した場所をいい、嘴の形が似ているのでこうよばれる。青森市には善知鳥神社があるが、「陸奥(みちのく)の外(そと)の浜なる呼子鳥鳴くなる声はうたふやすかた」と詠んだ藤原定家(ていか)の歌があるように、陸奥(むつ)外ヶ浜にまつわる伝説にちなんでいる。

[柳澤紀夫]

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世界大百科事典(旧版)内のウトウの言及

【善知鳥安方】より

…善知鳥文治安方は,近松半二ら合作の浄瑠璃《奥州安達原》(1762初演)や山東京伝の読本《善知鳥安方忠義伝》(1806刊)などで,罪ある亡き主人の世に秘すべき遺児をかくまう役所を負って活躍している。命名の由来は,ウミスズメ科の海鳥ウトウの鳴声にまつわる和歌説話にある。母鳥が空中でウトウと鳴くと,地上に隠れている子がヤスカタと答える。…

※「ウトウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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