あさ【麻】
〘名〙
① クワ科の
一年草。中央アジアの原産と考えられるが、日本への渡来も古く、古代より、重要な繊維原植物として栽培されている。高さ一~三メートル。茎は四角柱で細毛がつく。葉は掌状に三~九裂し、各片は細長く、先がとがり、縁には鋸歯
(きょし)がある。雌雄異株で、夏、淡黄緑色の雄花と、緑色の雌花が咲く。実は「おのみ」と呼ばれ、灰色の卵円形で食用となるほか油をとる。インド産のものは麻酔性物質を多く含む。茎の皮から繊維をとり、布や糸、
綱などとする。古代、麻でつくった衣服は喪服として用いた。また、皮をはいだ残りの茎は「おがら」と呼ばれ、懐炉灰の原料、わら屋根の下ぶきなどのほか、お盆の「迎え火、送り火」としてたくのに用いる。
大麻。→
苧(お)・
麻(そ)。《季・夏》
※
万葉(8C後)九・一八〇〇「小垣内
(をかきつ)の 麻
(あさ)を引き干
(ほ)し 妹
(いも)なねが 作り着せけむ 白栲
(しろたへ)の 紐をも解かず」
※太平記(14C後)二「身を隠さんとて日を暮らし、麻(アサ)や蓬(よもぎ)の生ひ茂りたる中に隠れ居たれば」
② 大麻のほか、
亜麻、
苧麻(ちょま)、黄麻
(こうま)、マニラ麻、ニュージーランド麻などの植物からとれる強靱な有用繊維の多くの種類をさす総称的な呼び名。また、それらの原植物の名。
※方丈記(1212)「藤の衣、あさのふすま、得るにしたがひて肌(はだへ)を隠し」
※随筆・幕朝故事談(1789‐1801か)「御門番大名、御規式御成の節御成還御共麻にてつとめる也」
そ【麻】
〘名〙 あさ。「あ
かそ(赤麻)」「か
みそ(紙麻)」「すがそ(
菅麻)」「まそ(真麻)」「やまそ(山麻)」などと複合して用いることが多い。
※万葉(8C後)二・一五七「
三輪山の山辺真蘇
(ソ)木綿(ゆふ)短か木綿かくのみからに長くと思ひき」
[
補注]
上代から「あさ」「お(を)」の
語もあり、この「そ」との間の関係は明確ではない。
ま【麻】
〘名〙
① 植物の麻
(あさ)。〔
日葡辞書(1603‐04)〕 〔荀子‐勧学〕
② 麻の皮。また、麻で作った糸・布・衣・帯。中国で喪服に用いた。〔礼記‐檀弓・下〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
麻
アサ
hemp
広義に麻とは,靱皮を利用する,大麻(hemp),亜麻(flax),ちょ麻(ラミー:ramie),ジュート(黄麻:jute)と,葉繊維を利用するマニラ麻,サイザル麻などの植物自体とその繊維の両者をいう.しかし,通常,繊維としての麻は大麻をさすことが多い.これはアサ科の1年生草本の靱皮繊維である.単繊維は長さ15~25 mm,幅16~50 μm 程度,色は暗褐色,漂白すると強度はいくぶん弱くなるが,綿,亜麻よりも強い.耐水性,耐食性が大きく,キャンバス,ホース,なわ,ロープに用いる.大麻繊維の形態上の特徴は,円筒状で先端がまるく,分岐することもあり,まるくない亜麻と区別できる.主成分はセルロースであり,分子量,結晶化度,配向度いずれも大きい.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
デジタル大辞泉
「麻」の意味・読み・例文・類語
そ【▽麻】
あさ。多く、他の語と複合して用いる。「山麻」「菅麻」
「娘子らが続麻のたたり打ち―掛けうむ時なしに恋ひ渡るかも」〈万・二九九〇〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
麻
あさ
古代から広く利用された繊維植物
縄文時代の出土例があり,『魏志』倭人伝にも記載がある。令制では布(麻布)は調・庸の対象となる。大麻 (たいま) ・黄麻・亜麻・苧麻 (ちよま) があり,最も一般的な庶民の衣料原料として普及。織物としては,中世に信濃(長野県)・越後(新潟県)で多く生産され,近世では,木綿におされたが,なお四木三草の一つにあげられ,奈良晒 (さらし) ・越後上布 (じようふ) ・近江蚊帳 (かや) などの名が高い。またさらした繊維を緒 (お) といい,魚網・綱・縄などの原料ともなった。
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
麻 (アサ・マ)
学名:Cannabis sativa
植物。クワ科の一年草,薬用植物
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報