蕩・盪(読み)とろける

精選版 日本国語大辞典 「蕩・盪」の意味・読み・例文・類語

とろ・ける【蕩・盪】

〘自カ下一〙 とろ・く 〘自カ下二〙
① とけて形がくずれる。固体がとけて液体になる。
※報恩録(1474)下「心眼眼相対頂門眼と云は、妄心本心一つにとろけ合た時が、已前の心也」
浄瑠璃傾城吉岡染(1710頃)下「とろけたるしがいをつかんで」
② 心がやわらぐ。心がゆったりする。
源平盛衰記(14C前)一一「入道殿の日頃の御憤りも、ことの外に蕩(トロケ)てこそ」
③ 心がひきつけられて理性を失う。心のしまりがなくなる。
談義本・風流志道軒伝(1763)一「浅之進を見てゑみを含めば、覚えずも心とろけて酔(ゑゑる)がごとく」

とらか・す【蕩・盪】

〘他サ四〙
金属などを、高熱によって溶解する。とかす。とろかす。
※大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)一〇「群生を済ひ、雲霓を盪(トラカシ)て、日月を光らす」
② 惑わせて本心を失わせる。また、心をやわらげて、うっとりするような感じにさせる。また、舌に感じる甘くておいしい味の形容にも用いる。とろかす。
※九冊本宝物集(1179頃)二「真済をとくだつせしめて、妄念をとらかすべし」

とろか・す【蕩・盪】

〘他サ五(四)〙
※巨海代抄(1586‐99)下「金石をとろかす朝日の勢いだ」
人情本・英対暖語(1838)四「女を蕩(トロ)かす好男(いろおとこ)極秘にて」

とろ・く【蕩・盪】

〘自カ下二〙 ⇒とろける(蕩)

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