真済(読み)しんぜい

精選版 日本国語大辞典 「真済」の意味・読み・例文・類語

しんぜい【真済】

平安初期の真言宗の僧。通称高雄僧正・柿本僧正紀僧正京都の人。空海に従い、高雄山神護寺第二世。承和三年(八三六)入唐を志したが台風のために果たせなかった。同一四年東寺長者。「性霊集」の編者として知られる。延暦一九~貞観二年(八〇〇‐八六〇

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「真済」の意味・わかりやすい解説

真済
しんぜい
(800―860)

平安初期の真言宗の僧。弘法(こうぼう)大師空海十大弟子の一人。左京の紀御園(きのみその)の子。幼時には儒学を学んだが、空海を慕って密教に入り、824年(天長1)伝法大阿闍梨(だいあじゃり)となる。続いて空海から高雄山寺(たかおさんじ)(神護寺(じんごじ))において事相(じそう)を受け、それを編集したのが『高雄口訣(くけつ)』として現存する。空海が高野山(こうやさん)に隠棲(いんせい)してからは、高雄山寺を預けられた。836年(承和3)には入唐(にっとう)の勅を奉じ、真然(しんぜん)(804/812―891)と遣唐船に乗ったが、台風にあって断念した。840年神護寺別当、847年東寺(とうじ)長者となる。856年(斉衡3)には真言宗で初めて僧正となったが、このとき彼は師の空海より階を超えるとして固辞し、むしろ大師に僧正位を請うが、大師に大僧正を贈るということで承諾した。これから高雄僧正とも称せられている。空海の願文・詩文などを集めた『性霊集(しょうりょうしゅう)』は、彼の編集によるものである。

[平井宥慶 2017年8月21日]

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改訂新版 世界大百科事典 「真済」の意味・わかりやすい解説

真済 (しんぜい)
生没年:800-860(延暦19-貞観2)

平安時代初期の真言宗の僧。高雄(たかお)僧正,柿本僧正,紀(きの)僧正とも呼ばれた。紀御園の子として京都に生まれた。若くして空海に就いて真言密教を学ぶ。824年(天長1)両部大法を受け,伝法阿闍梨(あじやり)となった。836年(承和3)真然とともに入唐を企てたが暴風のために断念した。40年神護寺に入り,内供奉(ないぐぶ)十禅師,神護寺別当,43年東寺二長者(二長者の初例),47年東寺一長者となった。853年(仁寿3)神護寺に年分度者3人を置き,857年(天安1)には自分の僧位を辞退して空海に大僧正の追贈を受けている。858年文徳天皇の病気平癒を祈ったが,崩御したため人々の非難にあい失脚隠居した。空海の詩文を集めて《性霊集(しようりようしゆう)》とし,その序文は名文として有名。伝説では,高雄山に12年こもったが,染殿の后を見て心に迷いを生じ,没後に大天狗と化し,愛宕山の太郎坊となったという。
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朝日日本歴史人物事典 「真済」の解説

真済

没年:貞観2.2.25(860.3.21)
生年:延暦19(800)
平安前期の真言宗の僧,空海十大弟子のひとり。京都の出身,紀御園の子。初め儒学を学んだが空海の室に入り,随身して密教を学び,天長1(824)年,25歳の若さで両部の灌頂を受けて伝法阿闍梨となる。その後も高雄山寺(神護寺)で空海より親しく諸秘密儀軌を伝授されたが,それらを自ら編集したものを『高雄口訣』という。天長9年,空海が高野山に隠棲するに当たって高雄山寺を付嘱され,また承和1(834)年空海の命によって宮中真言院を管理する。同3年,真然と共に遣唐船に乗って入唐しようとするが途中台風に遭って果たせず,帰京して高雄に住する。同7年内供奉十禅師,同10年権律師,東寺二長者,同14年律師,東寺一長者。仁明,文徳両天皇の信頼厚く,仁寿1(851)年少僧都,同3年権大僧都に叙せられ,斉衡3(856)年僧正に補せられたが,これは師位を超えるので辞退,ために空海に大僧正が遺贈された。文徳天皇の没とともに高雄に隠棲。世に高雄僧正,紀僧正と称される。詩文に秀で,20年にわたって随身した空海の遺文を編集して『遍照発揮性霊集』10巻とした。<参考文献>卍元師蛮『本朝高僧伝』,『三代実録』,杲宝『東宝記』,虎関師錬『元亨釈書』,『弘法大師弟子譜』

(津田眞一)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「真済」の解説

真済 しんぜい

800-860 平安時代前期の僧。
延暦(えんりゃく)19年生まれ。真言宗。空海に師事し,京都神護寺をつぐ。承和(じょうわ)3年(836)真然(しんぜん)とともに唐(とう)(中国)にわたろうとしたが,台風のため断念。神護寺別当,東寺長者をへて,僧正となる。詩文にすぐれ,空海の「性霊(しょうりょう)集」や「金剛界曼荼羅(まんだら)次第法」(「高雄口訣」)をあんだ。貞観(じょうがん)2年2月25日死去。61歳。京都出身。俗姓は紀。通称は高雄僧正,紀僧正,柿本僧正。

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百科事典マイペディア 「真済」の意味・わかりやすい解説

真済【しんぜい】

平安時代の真言宗の僧。京都の人。空海(くうかい)の直弟子。832年神護(じんご)寺に入り,空海滅後宮中真言院を主管した。836年入唐(にっとう)を企てたが不成功。847年東(とう)寺の長者となり,空海の詩文集《性霊集(しょうりょうしゅう)》を編集した。著書《胎蔵界念誦私記》など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真済」の意味・わかりやすい解説

真済
しんぜい

[生]延暦19(800)
[没]貞観2(860)
平安時代の真言宗の僧。空海の弟子。一般に高雄僧正,紀僧正と称される。空海のあとをうけて高雄山神護寺の第2世となった。また承和3 (836) 年入唐を志したが台風のため断念。のちに東寺の長者となり僧正に進んだ。師空海の詩文を編集して『遍照発揮性霊集』 (10巻) をつくった。

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