掛・懸(読み)がけ

精選版 日本国語大辞典 「掛・懸」の意味・読み・例文・類語

がけ【掛・懸】

〘接尾〙 (動詞「かける(掛)」の連用形から) 名詞または動詞の連用形に付く。
① 名詞に付いて、それを身に着けている意を表わす。
浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)下「草鞋(わらんぢ)がけの体(てい)
② 「心」あるいはこれに類する名詞に付いて、心中にいつもあることを抱いている意を表わす。常に気にしている意。「心がけ」「思いがけない」など。
③ 名詞に付いて、それを賭けることを示す。
※浄瑠璃・吉野都女楠(1710頃か)二「命がけの盗して」
④ 動詞の連用形に付いて、その動作の途中、その動作のついでの意を表わす。かけ。
※玉塵抄(1563)三七「故人の所えとまりがけに行とき路に迷たことか」
※虎明本狂言・腰祈(室町末‐近世初)「もどりがけに都へ参て、あふてはぐろへかへらふ」
※生(1908)〈田山花袋〉一一「鰯が今日は廉かったと夫が帰り懸(ガ)けに見て来ていふ」
和語数詞に付いて、指一本の幅を単位とした長さを示す。ふせ。
※義経記(室町中か)四「三人張に十三束三つがけ取って交ひ、よく引きてひゃうど射る」
⑥ 和語の数詞に付いて、その数だけの倍数であることを示す。
御伽草子平野よみがへりの草紙(室町時代物語集所収)(室町中)「鬼のいろは、あをく、あかく、つめながく、まなこは日月のことし、せいのたかさは、人だけ三つがけなり」
漢語の数詞に付いて、その数の割であることを示す。「八がけ」は八割の意。
人数を表わす数詞に付いて、いすなどがその人数だけ腰かけられることを示す。「三人がけ」など。

か・く【掛・懸】

[1] 〘他カ五(四)〙
① ある所に物の一部をつけてつなぎとめる。掛ける。
書紀(720)雄略一二年・歌謡「伊勢の野の 栄枝(さかえ)を 五百(いほ)(ふ)る柯枳(カキ)て」
② (構) 組み立てたり、編んだりして作る。
※書紀(720)武烈即位前・歌謡「大君の 八重の組垣 哿哿(カカ)めども 汝(な)をあましじみ 哿哿(カカ)ぬ組垣」
太平記(14C後)一〇「大船共を並べて矢倉をかきて」
③ (下帯を)結ぶ。締める。
今昔(1120頃か)一四「頭の髪は赤くして上様に昇れり、裸にして赤き浴衣(たふさぎ)を掻(かき)たり」
④ (「あぐらをかく」の形で) 足を組んですわる。
※虎明本狂言・察化(室町末‐近世初)「『心得た』と云て、あぐらかひているなり」
※はやり唄(1902)〈小杉天外〉八「胡坐(あぐら)を組(カ)いたままで一寸お点頭(じぎ)して」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒かける(掛)
[語誌]「かかる」の他動詞形である「かく」には四段活用と下二段活用がある。下二段活用の「かく」が古くから多義語としてさまざまな用法をもち、現在も下一段活用の「かける」として使われているのに対し、四段活用の「かく」は用法がかなり限定されており、しかも今日では「あぐらをかく」などの表現として慣用的に残っているだけである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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