精選版 日本国語大辞典「八重」の解説
や‐え ‥へ【八重】
〘名〙
① 八つ重なっていること。転じて、数多く重なっていること。また、そのもの。
※古事記(712)下・歌謡「大君の 心を緩(ゆら)み 臣の子の 夜幣(ヤヘ)の柴垣 入り立たずあり」
② 特に、花片が幾片も重なっていること。また、その花。重弁。
※万葉(8C後)二〇・四四四八「あぢさゐの夜敞(ヤヘ)咲くごとくやつ代にをいませわが背子見つつしのばむ」
③ 江戸時代、吉原の遊里で、遊女に客がないこと。「菅原伝授手習鑑」の桜丸の妻八重が、夫の切腹によって一人とり残されたところからいう。
※洒落本・廓節要(1799)「『お茶をひいた事を八重(ヤヱ)といふじゃアねへか』『一人取のこされかおきゃアがれ』」
や・える やへる【八重】
〘自ハ下一〙
① 重なる。幾重にも重なる。
※雑俳・天狗七部集(1847)「出して来る火桶・お気の短かい用が八重る」
② 満ちる。特に、潮が満ちる。満潮となる。
※随筆・孔雀楼筆記(1768)三「快晴の潮やゑたるとき、陸より望見れば」
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