払子(読み)ホッス

デジタル大辞泉 「払子」の意味・読み・例文・類語

ほっ‐す【払子】

唐音獣毛や麻などを束ねて柄をつけたもの。もとインドで蚊・ハエやちりを払うのに用いたが、のち法具となって、中国禅宗では僧が説法時に威儀を正すのに用いるようになり、日本でも真宗以外の高僧が用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「払子」の意味・読み・例文・類語

ほっ‐す【払子】

〘名〙 (「ほつ」「す」はそれぞれ「払」「子」の唐宋音)
① 獣毛や麻などを束ね、それに柄をつけたもの。もと、インドで蚊などの虫や塵を払う具であったが、のち法具となり、中国の禅宗では僧がこれを振ることが説法の象徴となった。日本でも鎌倉時代以後用いられ、浄土真宗以外ではすべて法会葬儀などの時の導師装身具とする。白払(びゃくほつ)麈尾(しゅび)
※正法眼蔵(1231‐53)見仏「払子を豎起するおほしといへども」
② (形が①に似ているところから) 「けずりかけ(削掛)①」の異名
※雑俳・柳多留‐六五(1814)「十四日払子を提る達磨門」

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改訂新版 世界大百科事典 「払子」の意味・わかりやすい解説

払子 (ほっす)

獣毛などを束ね,これに柄をつけて蚊虻を追い払う道具。白犛牛(びやくみようご)などの珍獣の毛を用いた華美なものは禁止されたが,一に麈尾(しゆび)と称するように,麈(おおじか)の毛などを用いることも少なくなかった。元来の実用具から,邪悪を払う功徳あるものとされるようになり,中国では禅僧が盛んに用いて一種荘厳具(しようごんぐ)とされた。日本でも鎌倉以後,禅宗を中心に用いられ,やがて他宗でも法会に導師が用いる法具とされるようになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「払子」の意味・わかりやすい解説

払子
ほっす

獣の毛などを束ね、これに柄(え)をつけた仏具サンスクリット語のビヤジャナvyajanaの訳。単に払(ほつ)、あるいは払麈(ほっす)ともよぶ。葬儀などの法要のとき、導師を務める僧が所持するが、元来はインドで蚊などの虫を追い払うために用いたもので、のちには修行者を導くときにも利用される。『摩訶僧祇律(まかそうぎりつ)』などによれば、比丘(びく)(僧)が蚊虫に悩まされているのを知った釈尊は、羊毛を撚(よ)ったもの、麻を使ったもの、布を裂いたもの、破れ物、木の枝を使ったものなどに柄をつけて、払子とすることを許したという。その材料に高価なものを使用することは、他人に盗みの罪を犯させるとの理由から禁止された。中国では禅宗で住持の説法時の威儀具として盛んに用いられた。日本でも鎌倉時代以後に禅宗で用いられるようになり、真宗以外の各宗で用いられる。

[永井政之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「払子」の意味・わかりやすい解説

払子
ほっす

仏具の一つ。長い獣毛 (馬の尾毛など) や麻を束ねて柄をつけたもの。もとは蚊やはえなどを追払うためにインドで用いられ,仏教では古くから実用だけでなく,煩悩のはえを払う意を寓した儀式用具とした。日本では真宗以外で,導師が装身具として手に持つ。

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普及版 字通 「払子」の読み・字形・画数・意味

【払子】ほつす

麈尾。

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