志太郡衙跡(読み)しだぐんがあと

国指定史跡ガイド 「志太郡衙跡」の解説

しだぐんがあと【志太郡衙跡】


静岡県藤枝市南駿河台にある官衙跡。駿河湾西岸、大井川が形成した三角州の北側にある丘陵の谷に位置する。谷は谷口部分で幅約100m、奥行き約150mの微高地で、奥部は低湿地となっている。遺構はこの微高地上に集中し、掘立柱建物30棟や井戸板塀、道路などがあった。建物は東西または南北に棟の方位をそろえ、当時の役所である官衙風の整然とした配置だが、柱穴の重複関係や柱穴からの出土土器により、8世紀前半~9世紀前半にかけて3期にわたり造り替えられたと思われる。建物群の西半部には、大規模な東西棟を中心に井戸のある広場や脇殿風の南北棟が展開し、遺跡の中心部分だったと推定される。建物群の東側は土塁または板塀によって囲まれているが、ここには8世紀後半以降、倉庫や雑舎風の建物が密集して建ち並び、東南隅には柵で設けられた小区画に庇付き建物があった。南辺の板塀の外側に沿った幅4~6mの道路は、板塀の西端に開く門を経て建物群中心部に通じていたと考えられている。遺跡からは土師器(はじき)や須恵器(すえき)、緑釉(りょくゆう)陶器灰釉(かいゆう)陶器、曲物(まげもの)、漆器木製農具、人形、木簡などの多量の遺物が出土している。とりわけ「志太」「志大領」「主帳」「志太厨」「郡」などと記された200点を超える墨書土器は、この遺跡が古代駿河国の志太郡衙に関わる施設の跡だったことを物語っている。1980年(昭和55)に国の史跡に指定された。JR東海道本線藤枝駅からしずてつジャストラインバス「藤枝保健センター前」下車、徒歩約3分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「志太郡衙跡」の意味・わかりやすい解説

志太郡衙跡
しだぐんがあと

静岡県藤枝市瀬古字御子ヶ谷(みこがや)で発見された律令(りつりょう)時代の地方官衙遺跡。1977年(昭和52)区画整理事業に伴う発掘調査によって、東西80メートル、南北60メートルほどの狭い沖積微高地上にコンパクトに配列された建物跡や井戸、板塀、道路の遺構とともに「志太・郡」「大領・少領・主帳」「志太厨(くりや)」などの郡名、官職名を記した墨書(ぼくしょ)土器が多量(269点)に出土した。これにより、立地や規模、企画性などにおいて特異なあり方をもつ地方官衙の姿、すなわち駿河(するが)国志太郡の郡庁遺構の所在を、文字資料をもって明確にすることができた。その点で重要な遺跡である。80年国の史跡に指定された。

[八木勝行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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