遺構(読み)いこう

精選版 日本国語大辞典 「遺構」の意味・読み・例文・類語

い‐こう ヰ‥【遺構】

〘名〙 残存する古い建築物。また、昔の土木建築の構造や様式などを知る手掛かりとなる残存物。
大和古寺風物誌(1943)〈亀井勝一郎唐招提寺「金堂は奈良時代大寺の金堂の形式を伝へる唯一の遺構といはれる」 〔杜甫玉華宮詩〕

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デジタル大辞泉 「遺構」の意味・読み・例文・類語

い‐こう〔ヰ‐〕【遺構】

残存する古い建築物。また、昔の都市建造物の形や構造を知るための手がかりとなる残存物。考古学では、住居跡・倉庫跡・水田跡など、その配置や様式を知る手がかりとなる基壇や柱穴など。
[類語]遺跡遺址旧跡旧址古跡古址史跡名跡貝塚城跡城址古戦場廃墟

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改訂新版 世界大百科事典 「遺構」の意味・わかりやすい解説

遺構 (いこう)

遺構は遺物とともに遺跡を構成する。動産的な性格をもつ遺物に対して,遺構は過去の人間活動の所産で,特定の土地に結びついた不動産的な性格を備えたものといえよう。通常,遺構は製作あるいは構築当初備えていた機能を失い,その一部あるいは大部分が破壊あるいは消滅していることが多い。住居の遺構である竪穴式住居跡は住居の地中に掘りくぼめた基底部分にすぎないし,官衙寺院の遺跡を構成する主要な遺構は,基壇や掘立柱柱穴など,かつての建造物のごく一部分にすぎない。ただし,墳墓のように当初から埋没あるいは埋納する意図をもって形成された遺跡では,腐朽や盗掘による破壊消滅を除けば,遺構はほぼ当初の形状を保持している。遺構という用語は考古学のほかに建築史でも使用されているが,それは過去に造営された建造物のうち,現在遺存しているもの,たとえば,現存する法隆寺の金堂や五重塔を遺構とよんでおり,考古学でいう遺構とは異なっている。
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普及版 字通 「遺構」の読み・字形・画数・意味

【遺構】い(ゐ)こう

廃墟の建物。唐・杜甫〔玉華宮〕詩 知らず何王の殿ぞ 壁の下

字通「遺」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遺構」の意味・わかりやすい解説

遺構
いこう
structure

人間が残した痕跡のうち,動かすことのできないもの。居住などを示す建物の跡,各種の溝の跡,さまざまな墓,祭祀の場,道路など,そのほか水田,畑,牧場,漁場,狩場など生産に直接かかわるもの,窯跡,精錬址のような道具の生産にかかわった場,不要なものを捨てた場など人間の暮しに関する種々の遺構がある。発掘調査の現場においては,すべての遺構の用途を決定できないが,今日の調査精度の向上と各種の自然科学的な分析法の発展により多くのものが確認されている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「遺構」の解説

遺構
いこう

過去に人類が残した日常・生産・信仰・葬祭などあらゆる生活のための構築物。住居・墓・水田・工房など多岐にわたり,時代・地域によって形態・構造の変化がみられる。遺構の多様な特徴は,それぞれの時代・地域の社会のあり方を反映すると考えられる。遺物群を含めて総体的には遺跡として認識される。

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世界大百科事典(旧版)内の遺構の言及

【遺跡】より

…現在,日本では26万4000ヵ所の遺跡が保護の対象として登録されているが,そのうちほぼ半分近くが地上に顕在している遺跡である。 遺跡は不動産的性格をもつ遺構と動産的な遺物から構成されている。また,遺構と遺物が一定の空間的関係を維持している状況を遺跡とする考えもある。…

【埋蔵文化財】より

…それには,河川,湖沼,海などの水中にあるもの,あるいは地表面に露呈しているものも含まれる。1950年に施行された文化財保護法にみえる概念で,考古学でいう遺構と遺物をほぼ指しているとみてよい。その所在地は埋蔵文化財包蔵地と呼ばれ,おおよそ考古学の遺跡に相当する。…

※「遺構」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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