精選版 日本国語大辞典「東西」の解説
とう‐ざい【東西】
[1] 〘名〙
① 東と西。また、東から西まで。
※性霊集‐二(835頃)沙門勝道歴山水瑩玄珠碑・序「北望則有湖、約計一百頃、東西狭、南北長」
※読本・椿説弓張月(1807‐11)続「馬に閃(ひら)りとうち跨り、東西(トウザイ)に別れつつ」 〔孟子‐告子・上〕
② (「東や西」の意から) あちらやこちら。あらゆる方向。
※霊異記(810‐824)上「愚人顛沛(たふ)れ 東西に狂ひ走る」
③ (転じて) 世間、また世間の事柄をさしていう。→東西を弁えず。
④ その位置が東と西であるもの、また「東」と「西」の字のつくものをまとめていう。
(イ) 舞台の上手(かみて)と下手(しもて)。
※歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)一「初手の餝付(かざりつけ)を東西へ引分る」
(ロ) 土俵の東と西。
※随筆・胆大小心録(1808)一三八「東西のとうどり、すまふが出て」
(ハ) 関東と関西。
(ニ) 東洋と西洋。
※侏儒の言葉(1923‐27)〈芥川龍之介〉ムアアの言葉「東西の画家には未だ嘗て落款の場所と軽視したるものはない」
⑤ 中国の俗語に由来して、物品・金銭をいう。
※随筆・秉燭譚(1729)五「東西とは物をいふ一おりのものを持出るなり」 〔通雅‐称謂〕
[2] 〘感動〙
① =とうざいとうざい(東西東西)①
※俳諧・鷹筑波(1638)五「東西(トウザイ)と春のしづむる朝かな〈正依〉」
② =とうざいとうざい(東西東西)②
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「東西只今の角力行司預り置ます」
③ 相手のことばを軽く制するときにいう。
※人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)五「『夫じゃア其他はみんな啌言(うそ)だといふのか』『ヲット東西、マア何にしろ横鎗を入れねへで聞べしサ』」
[語誌](1)節用集類で「東西」に「アナタコナタ」と当てられて、(一)②の意味でも使われた。また、サ変動詞のようにも用いられた。→とうざい(東西)する。
(2)「左右(そう)」と似ているが、「左右」よりも動作性が強いといわれる。
(3)(一)⑤については「南総里見八犬伝‐九」に「船にて飽まで東西(モノ)賜りぬ」と読ませた例が見られる。
(2)「左右(そう)」と似ているが、「左右」よりも動作性が強いといわれる。
(3)(一)⑤については「南総里見八犬伝‐九」に「船にて飽まで東西(モノ)賜りぬ」と読ませた例が見られる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報