日本大百科全書(ニッポニカ) 「丘陵」の意味・わかりやすい解説
丘陵
きゅうりょう
同地域の山地よりは低く平地よりは高くて、開析が進んで壮年期状態にある小起伏の陸地の部分。山地と丘陵を1000フィート(約300メートル)の高度で区別する人もあるが、アメリカのサウス・ダコタ州のブラック丘陵や、インドのニルギリ丘陵には、2000メートルを超える峰があり、高度によって丘陵を明確に定義することはできない。
新生代第三紀以前の岩石からなる丘陵には、頂部が丸みをもつ多数の小丘の集合となっていても、頂高がよくそろっていて、遠望すると平坦(へいたん)な背面をなすものが多い。これらの丘陵は、第三紀末ないし更新世(洪積世)前期には、台地、準平原、山麓(さんろく)面などの侵食面をなしていたことが推察される。
日本の平野や盆地の周辺には、鮮新洪積層や下部洪積層からなる、海成、湖成、河成の段丘や扇状地などの開析された丘陵が多く、それらは平らな谷床をもつ谷で細かく開析されているが、並列ないし分岐する脊梁(せきりょう)は比較的平らで凹凸せず、侵食面や堆積(たいせき)面である原面の一部を残存することも多い。
ヨーロッパには、古生代や中生代の古い岩石からなる丘陵が多い。ロシアではモスクワ西方のバルダイ丘陵、同じく南方の中央ロシア丘陵、ボルガ川右岸のボルガ丘陵、ウクライナ東部のドネツ丘陵、同じく南西部のボルノポドル丘陵などが知られ、またチェコのボヘミア東部のモラビア丘陵、イギリスのチェビオット丘陵、クリーブランド丘陵が著名である。日本では、北海道や中国地方の丘陵に、古生代や中生代の古い岩石からなるものがあるが、新第三紀層からなるものとしては馬追(うまおい)丘陵(北海道)、笹森(ささもり)丘陵(秋田県)、房総丘陵(千葉県)、魚沼(うおぬま)丘陵(新潟県)、東頸城(くびき)丘陵(新潟県)、宝達(ほうだつ)丘陵(石川県)などが知られ、また、鮮新洪積層や下部洪積層からなるものとしては多摩丘陵(関東南部)、狭山(さやま)丘陵(関東南西部)、大磯(おおいそ)丘陵(神奈川県)、水口(みなくち)丘陵(滋賀県)、堅田(かたた)丘陵(滋賀県)、千里(せんり)丘陵(大阪府)、枚方(ひらかた)丘陵(大阪府)などが代表的丘陵である。
これらの丘陵の丘頂付近は山林、丘腹や丘麓は耕地、谷底は水田に利用されている所が多い。近年、都市付近の丘陵は大規模な宅地や団地の造成、ゴルフ場、遊園地、大学などの建設で開発が著しく、河川の氾濫(はんらん)や地すべりなどの災害が発生して、自然保護が問題になっている。
[壽圓晋吾]