延・伸(読み)のべる

精選版 日本国語大辞典 「延・伸」の意味・読み・例文・類語

の・べる【延・伸】

〘他バ下一〙 の・ぶ 〘他バ下二〙
[一] 空間的に広げる。
① 広げる。また、長くする。
※霊異記(810‐824)下「即ち見に其の頸を張り曳(ノベ)、打ち殺さ将(む)とせし時に〈真福寺本訓釈 曳 乃へ〉」
曾我物語(南北朝頃)八「四角四面に瑠璃をのへ」
② (「手をのべる」の形で) 対象に向かって、手を長くのばす。また、人を助けようとする意で用いる。さしのべる。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「手を曳(ノヘ)て挽(ひ)き起すに」
③ 巻いたりたたんだりしてあるものを広げる。
兵範記‐保元三年(1158)正月一日「取打敷参進、展御座前
※人情本・英対暖語(1838)二「サアお休み遊ばしませんか。お床を延(ノベ)ました」
④ (むしろなどを広げて席を作る意から) 供養のための法会(ほうえ)などをとり行なう。また、供物を調える。
※米沢本沙石集(1283)一〇末「一鉢の飯を仏の最後の供養にのへし時」
⑤ 溶かしたりして広げる。「膠(にかわ)をのべる」
※説経節・説経苅萱(1631)中「うるしくろいと申せとも、よろつのかくをのふるなり」
[二] 時間的に広げる。
① 命などを長く久しくする。
※観智院本三宝絵(984)下「若人命をのへむと思はば放生せよ」
期日時刻を先にする。また、期間・時間を長くする。延期する。延長する。
源氏(1001‐14頃)蜻蛉「日をのべてもさる事はする物を」
[三] (「心をのべる」の形で) 気持をゆるめる。のびのびとさせる。くつろがせる。
万葉(8C後)一〇・一八八二「春の野に心述(のべ)むと思ふどち来し今日の日は暮れずもあらぬか」

のべ【延・伸】

〘名〙 (動詞「のべる(延)」の連用形の名詞化) のばすこと、また、のばしたもの。
① ひらたくのばしたもの。特に、延金をいう。
※万金産業袋(1732)二「その鍔の地を笹なり菊なりにうすくほり、それへ金の延(ノベ)をその形(なり)に切いれて」
② 「のべギセル(延━)」の略。
※落語・殿様の廓通ひ(1890)〈禽語楼小さん〉「新造一服吹附(すひつ)けて華魁に出すと延煙管(ノベ)だから重い」
③ 同一のものがいくつ重複しても、それぞれ一つとして数えて合計すること。接頭語的にも用いる。「二階建の家ののべ坪」「必要なのべ人員」など。
謡曲の節扱いの一つ。字音を引きのばし、間をもたせて謡うこと。
※わらんべ草(1660)二「一のべ〔さきへやる〕一ちぢめ〔さきをまへへ〕」
⑤ 期日・期間などをのばすこと。
※天理本狂言・箕被(室町末‐近世初)「先あすの事は、のべにやらせられひと云」
駒下駄の背面を凹に彫ること。〔随筆守貞漫稿(1837‐53)〕
⑦ 「のべがみ(延紙)」の略。
※仮名草子・都風俗鑑(1681)二「はな紙はのべを二三でうおしおり」

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