時刻
じこく
time
時の流れにおけるある一定の瞬間をいう。適当に選んだ原点との間の長さを時間の単位を用いて表わす数値によって表示される。学術的に用いられている時刻は,そのよりどころによって,世界時 UT,暦表時 ET,原子時 ATの3種に大別される。もともと日常生活は太陽と密接に結びついているため,時刻は太陽の時角 (子午線からの角度) によって決められた。これを真太陽時という。実際の太陽は天球上を一定の速さで進まないため,真太陽時には季節的変化を生じる。そこで天の赤道上を一定の速さで進む仮想の天体 (→平均太陽 ) を考え,その時角によって決められる平均太陽時が用いられてきた。グリニッジ子午線における平均太陽時が世界時である。平均太陽の位置は理論から計算されるので,精密に位置のわかっている星の子午線通過を観測することにより世界時が求められる。世界時は地球の自転運動の不整の影響を受けて不規則に変動する。そのため,天体力学では暦表時が用いられる。これは地球の公転によって定められる時刻である。一方,原子の放射の振動数が一定であることを利用して時刻を測定することが 1955年に始った。これが原子時で,現在ではセシウム原子時計がその測定に用いられている。現在日常生活に用いられている時刻は協定世界時といわれるものである。これは,原子時から得られる秒をもとに,世界時との差が 0.9秒以内になるよう必要に応じて1秒 (閏秒) を挿入または引抜くことにより維持される。世界各国では協定世界時に標準子午線の経度を加えたものを標準時として使っている。日本標準時は協定世界時に9時を加えたものである。
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時刻【じこく】
暦の単位としての1日を定め,またこれを分割して時刻を数える規定を時法という。1日の初めは,古代には日の出(バビロニア,エジプト等)や日没(アラビア,ユダヤ,トルコ等)にとったが,14世紀後半に機械時計が発達すると現行の真夜中が普及した。1日の分割法は,カルデア,バビロニアで12,エジプトで24,中国で100および96分割が行われた。現行の60進法による時分秒の体系はバビロニアに由来する。初めは昼と夜を別々に6または12等分する(したがって1分割の長さは昼夜により異なり,また季節によって変動する)不定時法が用いられたが,天文学では古くから昼夜を通じて等分する定時法を用い,機械時計の発達とともにこれが一般に普及した。 現在,時刻は天体の視運動に基づき決定されるが,基準となる子午線をどう選ぶかにより地方時・標準時・世界時(グリニッジ時)があり,対象となる天体により太陽時・恒星時,天体の視運動の修正の程度により真太陽時・平均太陽時・暦表時がある。また時間単位の秒はセシウム原子振動によって定められ(原子時),時刻は世界時によるという異質の原理による変則的状況になったので,国際天文学連合等が中心になって協定世界時という新システムを設けた。すなわち,原子時計が秒を刻み,世界時との時刻に±0.7秒のずれが生じると,閏(うるう)秒を挿入するというもので,1972年から実施されている。→時(とき)/報時
→関連項目暦
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デジタル大辞泉
「時刻」の意味・読み・例文・類語
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じこく【時刻 time】
移りゆく時の一つの点を時刻という。時刻と時刻との間の時の長さを時間という。時間を定めるには,二つの時点を定めその間の時の長さを単位として測定しなければならない。人間が時刻や時間を必要としたのは,一つは集団社会生活を営むようになって,その社会の秩序を保ち統制をとるためであり,他は農耕生活に欠くことのできない暦を作製したり,天体現象を記述する必要からである。
[定時法と不定時法]
古代における人間生活は当然太陽に支配されているので,前者は太陽の出入の時点を基準として昼夜を区別し,そのおのおのの時間を等分することによって時刻を定めた。
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普及版 字通
「時刻」の読み・字形・画数・意味
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出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例