宿院（読み）スクイン

デジタル大辞泉

すく‐いん〔‐ヰン〕【^▽宿院】

《「すく」は「しゅく」の直音表記》「しゅくいん（宿院）」に同じ。
「春日へとて、―のいとむつかしげなるに留まりぬる」〈かげろふ・中〉

しゅく‐いん〔‐ヰン〕【宿院】

寺の宿泊所。僧坊。また、宿坊。すくいん。
「住み馴れた―の生活に対する未練と」〈谷崎・二人の稚児〉

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

しゅく‐いん ‥ヰン【宿院】

〘名〙

① 出張の僧や、参詣者などが宿泊する寺坊。宿坊。すくいん。

※小右記‐天元五年（982）四月二五日「辰時許参_二宿院_一着_二饗座_一」

② 神幸の旅所。

※小右記‐正暦元年（990）九月五日「今夜宿_二望忠所領宿院下宅_一」

すく‐いん ‥ヰン【宿院】

〘名〙 ＝しゅくいん（宿院）

※蜻蛉（974頃）中「春日へとて、すく院のいとむづかしげなるに、とどまりぬる」

出典　精選版 日本国語大辞典

日本歴史地名大系

宿院
しゆくいん

• 奈良県：奈良市
• 奈良町
• 宿院町
• 宿院

[現在地名]奈良市宿院町

「中右記」嘉保二年（一〇九五）二月六日条に、殿下（藤原師通）の春日社参に関して「上卿代依殿下仰可勤仕者着直衣相逢、申承了由申時計先着宿院、（中略）宿院之司兼居饗膳、（中略）宿院之饗并弁宿所儲等、宿院司等所勤仕也」とみえる。「三会定一記」（興福寺叢書）の元久二年（一二〇五）条には興福寺維摩会のための勅使の南都下向について「勅使弁雑事宿院使等沙汰等頗依為不法」とある。これらにより、宿院は春日詣の際の藤氏長者一行や興福寺維摩会の勅使一行の饗応の場や宿所などになっていたことがうかがえる。

出典　平凡社「日本歴史地名大系」

改訂新版　世界大百科事典

宿院 (すくいん)

僧侶が出張したときに宿泊する寺坊，あるいは寺院に参詣した人が宿泊する寺坊をいう。〈しゅくいん〉ともよむ。《蜻蛉日記》には〈すくいんのいとむつかしげなるにとどまりぬ〉とある。《太平記》には〈宿院の後を廻て如法経塚へ押寄，八百人の兵共，同音に時をどっと作る〉とみえている。また，神社の祭礼のとき，神輿を本宮から渡御して，かりにとどまるところ，すなわち御旅所なども宿院といわれていたかと思われる。和泉国に宿院という地名があるが（現，大阪府堺市堺区宿院町），《堺鑑》によると〈宿院　此地は住吉明神毎年六月晦日の御祓，御旅所也〉とある。この地は旧堺南荘にあり，南宗寺の北に位置し，開口（あぐち）神社の南に接するところである。
執筆者：福田 榮次郎

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

日本大百科全書(ニッポニカ)

宿院
しゅくいん

大阪府堺市(さかいし)堺区、旧環濠(かんごう)内市街地のほぼ中央の地区。もと住吉(すみよし)大社（大阪市住吉区）の社領で、同社の旅所(たびしょ)として、毎年8月1日の住吉祭には神輿(みこし)の渡御(とぎょ)があり、地名はこれに由来する。阪堺(はんかい)電軌、国道26号が通じ、宿院駅の近くに千利休屋敷跡がある。

［編集部］

[参照項目] | 堺（市）

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

世界大百科事典（旧版）内の宿院の言及

【宿院】より

…《蜻蛉日記》には〈すくいんのいとむつかしげなるにとどまりぬ〉とある。《太平記》には〈宿院の後を廻て如法経塚へ押寄，八百人の兵共，同音に時をどっと作る〉とみえている。また，神社の祭礼のとき，神輿を本宮から渡御して，かりにとどまるところ，すなわち御旅所なども宿院といわれていたかと思われる。…

※「宿院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」