殿下(読み)でんか

精選版 日本国語大辞典 「殿下」の意味・読み・例文・類語

でん‐か【殿下】

〘名〙 (古くは「てんが」とも)
御殿の下。宮殿や殿堂の階(きざはし)の下。
※内裏式(833)元正受群臣朝賀式「于時殿下撃鉦三下」 〔戦国策‐燕策・王喜〕
三后皇太子皇族などを敬っていう称。皇太子、皇太子妃皇太孫、皇太孫妃、親王、親王妃内親王、王、王妃、女王などに用いる。
※令義解(718)儀制「皇后皇太子。於太皇太后皇太后。率土之内。於三后皇太子上啓。称殿下。自称皆臣妾
※東京日日新聞‐明治二四年(1891)五月一五日「特派全権大使有栖川熾仁親王殿下」 〔高允‐諫皇太子営立田園書〕
摂政関白・将軍を敬っていう称。
※大鏡(12C前)一「このただいまの入道殿下の御ありさまをも」
※読本・雨月物語(1776)仏法僧「殿下(デンカ)と申奉るは、関白秀次公にてわたらせ給ふ」
[補注]「日葡辞書」に「Tenga」、「和英語林集成(初版)」には「Denka」とあり、近世中期以降にテンガからデンカに変化したものか。

てん‐が【殿下】

〘名〙 (「てん」は「殿」の漢音) ⇒でんか(殿下)

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デジタル大辞泉 「殿下」の意味・読み・例文・類語

でん‐か【殿下】

《古くは「てんが」とも》
皇太子皇族などの敬称。皇太子・皇太子妃・皇太孫・皇太孫妃・親王・親王妃・内親王王妃女王などに用いる。→陛下へいか
摂政関白将軍の敬称。平安時代以降用いられるようになった。
宮殿や御殿のきざはしの下。
[類語]陛下妃殿下

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普及版 字通 「殿下」の読み・字形・画数・意味

【殿下】でんか

諸侯貴族の尊称。〔三国志、魏、伝〕初め太子未だ定まらず。臨侯植、り、丁儀等竝(み)な其の美を贊す。太曹操に問ふ。對(こた)へて曰く、庶を以て宗に代ふるは、先世の戒なり。願はくは殿下、深重に之れを察せよと。

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改訂新版 世界大百科事典 「殿下」の意味・わかりやすい解説

殿下 (でんか)

〈てんが〉とも読む。本来は御殿の下をいうが,三后,皇太子・皇族等,摂政・関白の敬称。養老儀制令では太皇太后・皇太后・皇后の三后および皇太子に言上するには殿下の敬称をつけよと定め,公式令には殿下の語には闕字(けつじ)の礼を用いよと規定している。しかし平安時代に入るとしだいに用途が広がり,《菅家文草》には中宮(皇太夫人班子女王)や尚侍(嵯峨皇女源全姫)に殿下をつけた例が見え,さらに《九暦》に関白藤原忠平を指して殿下と称したのを早い例として,摂政・関白の敬称として多く用いられ,ついにはただ〈殿下〉といえば現任の摂政ないし関白を指すようになり,これに対し前任の摂政・関白を〈大殿〉と称するようにもなった。明治以降は,皇室典範の規定により,皇后をはじめ三后は天皇とともに陛下と敬称し,殿下は三后以外の皇族,すなわち皇太子,皇太孫,親王,王とその妃および内親王,女王の敬称と定められた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「殿下」の意味・わかりやすい解説

殿下
でんか

養老儀制令(ぎせいりょう)では皇后・皇太后・太皇太后(たいこうたいごう)の三后と皇太子への敬称とし、公式令(くしきりょう)は闕字(けつじ)対象と規定する。実例では、712年(和銅5)の長屋王願経(がんぎょう)跋語(ばつご)に「長屋殿下」が闕字されずに書かれているなど皇族の敬称に用いられ、また平安時代からは摂政・関白の敬称に用いられている。明治以後の皇室典範では天皇と三后の敬称を陛下(へいか)とし、殿下は皇太子・親王・王およびその妃、内親王(ないしんのう)・女王(にょおう)の敬称とした。

[柴田博子]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「殿下」の解説

殿下
てんが

「でんか」とも。三后・皇太子もしくは摂政・関白に対する敬称。儀制令皇后条では,皇后・皇太子は太皇太后・皇太后に対して殿下と称し,庶民に至るまでの臣下は三后・皇太子に対して殿下と称することと規定されており,また公式令闕字条で闕字の対象となっていた。平安時代になって摂関制が定着すると,最高権力者たる摂政・関白を殿下とよんだ。「皇室典範」では,天皇・三后以外の皇族に対する敬称とされた。

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世界大百科事典(旧版)内の殿下の言及

【天下】より

…例えば〈天下布武〉の印判を愛用した織田信長は,上洛後自分への協力は〈天下の為〉〈天下に対して大忠〉であると主張し,一方将軍義昭には〈天下の褒貶〉や〈執沙汰〉を論拠に非難を浴びせ,ついにはみずから〈天下を申し付くる〉と称するなど,天下の権威と多義性をしきりに利用している。 とくに最高権力者を端的に天下と呼ぶ用法は,おそらく,元来関白などを指す〈殿下〉の当て字としての天下とも交錯しつつ,足利時代以後しだいに広がった。そこで〈天下分け目〉の関ヶ原後も,天下とはすなわち徳川将軍を往々意味する。…

【天下】より

…例えば〈天下布武〉の印判を愛用した織田信長は,上洛後自分への協力は〈天下の為〉〈天下に対して大忠〉であると主張し,一方将軍義昭には〈天下の褒貶〉や〈執沙汰〉を論拠に非難を浴びせ,ついにはみずから〈天下を申し付くる〉と称するなど,天下の権威と多義性をしきりに利用している。 とくに最高権力者を端的に天下と呼ぶ用法は,おそらく,元来関白などを指す〈殿下〉の当て字としての天下とも交錯しつつ,足利時代以後しだいに広がった。そこで〈天下分け目〉の関ヶ原後も,天下とはすなわち徳川将軍を往々意味する。…

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