デジタル大辞泉
「売」の意味・読み・例文・類語
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う・る【売】
[1] 〘他ラ五(四)〙
① 代金を受け取って品物や権利を他人に渡す。また、買い手を求める。販売する。ひさぐ。⇔
買う。
※斯道文庫本願経四分律平安初期点(810頃)「彼の
比丘尼〈略〉酒を沽
(ウル)」 〔史記‐貨殖伝・任氏〕
② 女が代金を受け取って男に身を任せる。ひさぐ。⇔
買う。
※
歌舞伎・
傾城壬生大念仏(1702)上「
太夫、どうじゃ。売りゃるの売りゃるの。俺にも一つ売ってたも」 〔五雑俎‐人部・四〕
③ 自分の利益のため、属する国、団体、仲間などの所有物、情報などを敵対する側に渡す。信頼を裏切る。また、自分の
信念をまげる。
※
サントスの御作業(1591)一「ソノデシ ノ ウチ イチニン ヨリ vrare
(ウラレ)」
④ 本当のところを隠して、別の事を理由や目的だと見せかける。
口実にする。かこつける。
※
浮世草子・日本永代蔵(1688)二「ぬけ参りの者に御合力と御伊勢様を売
(ウリ)て此十二三年も同じ偽
(うそ)にて世を過る女あり」
⑤ (「名を売る」「顔を売る」などの形で用いられる) 自分のことを広く人々に知らせるようにする。人の注意をひくような
態度を表わす。
※
人情本・恋の
若竹(1833‐39)初「お前さんも人に知られた方なりゃァ、私もちったァ、顔も売
(ウ)った女で御座いますから」
※魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前「地方では立派な
紳士で売って居るらしい
服装(みなり)はして居る」
※銀の匙(1913‐15)〈
中勘助〉前「
喧嘩を売ったのは繁太の罪だけれど」
⑧ (「恩を売る」「媚(こび)を売る」などの形で用いられる) 押し付ける。
う・れる【売】
〘自ラ下一〙 う・る 〘自ラ下二〙
① (「うる(売)」の可能動詞) 売ることができる。
※雑俳・柳多留‐一二(1777)「女さかしくてもみぢもうれぬなり」
② 代金とひきかえに品物を買い手が持っていく。また、商品がどんどん買われる。品物が引き取られる。
※虎明本狂言・
河原太郎(室町末‐近世初)「うり初をせぬ内に人に飲ませたと云ふても、うるるならばうれうず」
③ (商売がはんじょうするの意から)
芸妓、
俳優、小説家などがもてはやされる。
※
落語・今戸の狐(1892)〈三代目三遊亭円遊〉「お前も是まで売れた人間ではあるし、〈略〉是から気楽にやったら宜
(よか)らう」
④ 広く人に知られる。
※歌舞伎・浮世柄比翼稲妻(
鞘当)(1823)大切「毎日地内の
念仏講で、双盤ぢゃア余程売れた顔サ」
⑤ 嫁にもらわれていく。また、卒業生の
就職口がきまる。
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉新学士「甲原は愈々内務へ売れたさうだナ」
うり【売】
〘名〙
※虎明本狂言・牛博労(室町末‐近世初)「今日は此所の市で御ざる、定めてうりにいでぬ事は有まひ」
② 相場が下がるのを予想して売り方に回ること。やり。⇔
買い。
※当世商人気質(1886)〈饗庭篁村〉三「売りに廻ってよいやら買と出てよいやら」
③ 店や品物、人などの看板となる点。売り物。セールスポイント。
うれ【売】
〘名〙 売れること。売れゆき。
※浮世草子・西鶴織留(1694)二「おもひつきはよき細工なれども是は売(ウレ)の遠き物也」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報