中勘助(読み)ナカカンスケ

デジタル大辞泉 「中勘助」の意味・読み・例文・類語

なか‐かんすけ【中勘助】

[1885~1965]小説家詩人。東京の生まれ。処女作銀の匙」で夏目漱石に認められた。隠者的生活を送り、孤高の作家として知られた。小説提婆達多でえばだった」「」、詩集琅玕ろうかん」など。

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精選版 日本国語大辞典 「中勘助」の意味・読み・例文・類語

なか‐かんすけ【中勘助】

小説家。東京出身。東京帝大卒。「銀の匙」で世に出た。文壇潮流に流されない特異な存在の作家として認められた。著に「菩提樹の蔭」「提婆達多」「街路樹」「鳥の物語」など。明治一八~昭和四〇年(一八八五‐一九六五

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中勘助」の意味・わかりやすい解説

中勘助
なかかんすけ
(1885―1965)

小説家、詩人、随筆家。明治18年5月22日東京に生まれる。1909年(明治42)東京帝国大学国文科卒業。処女作『銀の匙(さじ)』(1913)は夏目漱石(そうせき)の推挙によって『東京朝日新聞』に連載されたが、その後沈黙、世俗を避けた深い苦悩のすえに小説『提婆達多(デーバダッタ)』(1921)、『犬』(1922)を発表するとともに、随筆『沼のほとり』(1922)、『しづかな流』(1926)等によって、「詩を生活する」という独自の芸術境を築く作家として注目される。『雁(かり)の話』(1933)に始まって、戦中戦後の混乱の時代にも書き継がれた『鳥の物語』(1983刊)は澄みきった彼の晩年の心境を物語る大人のための童話。『提婆達多』『犬』が大人の狂おしい我執や嫉妬(しっと)の断ちがたい愛欲世界を描いているのに対し、これは彼の求め続けた高い愛の世界が自由に羽ばたいている。詩を志しながら散文しか書けなかった彼は30代もなかばを過ぎたころから詩を書き始め『琅玕(ろうかん)』(1935)以下8冊の詩集を残している。三好(みよし)達治は、中勘助の詩には人間の善意識を呼び覚ます力と涯底(そこい)のしれぬ哀感があると高く評価した。65年(昭和40)1月朝日賞受賞、同年5月3日没。

[渡辺外喜三郎]

『『中勘助全集』全13巻(1960・角川書店)』『『中勘助随筆集』(岩波文庫)』『渡辺外喜三郎著『中勘助の文学』(1971・桜楓社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中勘助」の意味・わかりやすい解説

中勘助
なかかんすけ

[生]1885.5.22. 東京
[没]1965.5.3. 東京
小説家,詩人。第一高等学校を経て 1909年東京大学国文学科卒業。夏目漱石に師事した。江戸の面影を伝える商人町に囲まれた士族屋敷に育ち,その体験を優雅繊細な文体で描いた清潔な長編自伝小説『銀の匙』 (1913,15) で文壇に認められた。その後,仏教説話に取材した『提婆達多 (でーばだった) 』 (21) などを書いたが,『犬』 (22) 以後は小説を離れ,『鳥の物語』 (49) などの童話や『琅 玕 (ろうかん) 』 (35) ほかの詩作により愛と美の思想をうたう詩人として孤高の生涯をおくった。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「中勘助」の解説

中勘助 なか-かんすけ

1885-1965 大正-昭和時代の小説家,詩人。
明治18年5月22日生まれ。大正2年夏目漱石(そうせき)の推薦で幼少年期をえがいた小説「銀の匙(さじ)」を「東京朝日新聞」に連載,みとめられる。時流にとらわれず,文壇とは一線を画し,生涯孤高をたもった。昭和40年5月3日死去。79歳。東京出身。東京帝大卒。作品に「提婆達多(でーばだった)」「街路樹」「鳥の物語」,詩集に「飛鳥」など。
【格言など】もし我々に死がなかったら生の倦怠をどうしようか。死こそは実に我々に恵まれた甘露である(「しづかな流」)

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百科事典マイペディア 「中勘助」の意味・わかりやすい解説

中勘助【なかかんすけ】

小説家,詩人。東京生れ。東大国文卒。夏目漱石に師事,その推薦で朝日新聞に自伝的作品《銀の匙》を連載。《提婆達多(でーばだった)》《犬》等の小説のほか,詩集《琅【かん】(ろうかん)》や随筆集などがある。時流に染まず孤高の生涯を送った。全集(13巻)がある。

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