友情
ゆうじょう
武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)の中編小説。1919年(大正8)10~12月『大阪毎日新聞』に連載。20年4月以文社(再版以後は叢文閣)刊。青年作家で親友の野島と大宮、および彼らがともに心をひかれている杉子との3人のかかわりをたどる作。前半は野島の杉子への恋の成り行きを描き、後半でパリに去った大宮と杉子との交わす書簡を通じて、二人の真実を明かす。大宮における友情と恋愛との相剋(そうこく)から自己の恋をとるに至る経過がそのまま野島の失恋と傷心に重なるという構成には、夏目漱石(そうせき)の『それから』(1909)が意識されているが、自己の自然尊重を明瞭(めいりょう)に告げるのは杉子であり、野島も大宮もそれぞれの道を生きるべく運命づけられている点に特色がある。
[遠藤 祐]
『『友情』(岩波文庫・新潮文庫)』▽『本多秋五著『「白樺」派の作家と作品』(1968・未来社)』
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ゆう‐じょう イウジャウ【友情】
[1] 友だちの間で、相手の
立場を尊重し思いやる心。友のよしみ。
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉四一「
右手を胸上に置て曰く、友情独り茲に在り」
[2] 小説。武者小路実篤作。大正八年(
一九一九)発表。青年作家野島は理想の女性杉子に想いを寄せるが、彼女は野島の
友人大宮のもとに去る。恋愛と友情のからみ合いを心理的に
描写。
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デジタル大辞泉
「友情」の意味・読み・例文・類語
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普及版 字通
「友情」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の友情の言及
【友愛】より
…友愛という言葉は,狭くは〈友情friendship〉を意味する場合もあるが,特に英語fraternityなど西欧語の訳語として,兄弟の間の情愛から,さらにひろく家族など同一集団を結合する情愛,人間全体を一つの家族として包み込む人間相互の兄弟愛をも意味する。このもっとも広い意味で,友愛は〈博愛philanthropy〉〈隣人愛brotherly love〉と同義である。…
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