和・凪(読み)なぐ

精選版 日本国語大辞典 「和・凪」の意味・読み・例文・類語

な・ぐ【和・凪】

[1] 〘自ガ上二〙
① たかぶった気持がおさまる。心が静まる。穏やかになる。なぐさむ。なごむ。
万葉(8C後)一七・四〇一九「天離る鄙とも著くここだくも繁き恋かも奈具流(ナグル)日も無く」
※土左(935頃)承平五年一月九日「これらを人のわらふを聞きて、海はあるれども心はすこしなぎぬ」
② 風がやみ海面が静かになる。風波がおさまる。波が穏やかになる。
※万葉(8C後)九・一七八一「海つ路の名木(なぎ)なむ時も渡らなむかくたつ波に船出すべしや」
③ 空がよく晴れる。晴れて穏やかになる。
古今(905‐914)恋五・七五三「雲もなくなぎたる朝の我なれやいとはれてのみ世をばへぬらん〈紀友則〉」
[2] 〘自ガ四〙 穏やかになる。静まる。
※平中(965頃)一「身のうみの思ひなぐ間は今宵かなうらに立つ浪うち忘れつつ」
[3] 〘自ガ下二〙 ⇒なげる(和)
[補注]平安時代以降は、あるいは全部四段活用化したかとも考えられるが、連用形終止形の例は判別が困難なので上二段の箇所におさめた。

なぎ【和・凪】

〘名〙 風がやんで、波がなくなり、海面が静かになること。「朝なぎ」「夕なぎ
※古今(905‐914)恋三・六二七「かねてより風にさきだつなみなれやあふことなきにまだき立らん〈よみ人しらず〉」
日葡辞書(1603‐04)「フネニ ノル タメニ ヨイ naguigia(ナギヂャ)
[補注]四段活用動詞の連用形の名詞化したもの。水面がなぎ倒されたように平らになることで、「なぐ(薙)」の連用形の名詞化とする説もある。また、「万葉‐一〇六二」に「夕薙(ゆふなぎ)」という表記がある。

な・げる【和・凪】

〘自ガ下一〙 な・ぐ 〘自ガ下二〙 風がやんで静かになる。風がなくなる。
歌舞伎三題噺魚屋茶碗(とと屋茶碗)(1882)序幕「風が凪(ナ)げてしまったのは、いい都合で」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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