南中
なんちゅう
天体が日周運動により子午線を通過すること。ただし、この用語は「南」という文字を使っているので、地球北半球の観測者が、子午線上天頂より南の部分を天体が通過するのをいうのにはよいが、天体によっては天頂より北を通過したり、さらに周極星では天の北極の上方・下方を2回通過するので、「子午線通過」に「南中」という用語を用いるのは適切でない。南半球の観測者にとっても同様である。天文学では「子午線通過」または「正中(せいちゅう)」の用語を使う。なお、天体高度が極大(もっとも高く)となる時を南中(正中)とする説明もあるが、理論的にも実際にも正中の時に極大高度になるとは限らず、適当でない。
[大脇直明]
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なん‐ちゅう【南中】
〘名〙
① 天体が天頂の南側で子午線を通過すること。正中(せいちゅう)。
※西域物語(1798)上「西域にては年中の南中する星の度数時刻を記て、タアフルと名づけ、海陸夜行の人の助とせり」
② 南方。また、南方の地。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)残「有二遺孤(わすれかたみのこ)一、在二南中一」
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南中【なんちゅう】
極上正中,正中とも。子午線通過の一種。天体が日周運動によって,子午線の天の北極から天頂を経て南極に至る半円部分を東から西へ通過するときのこと。
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デジタル大辞泉
「南中」の意味・読み・例文・類語
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なんちゅう【南中 meridian passage】
子午線通過の一種。観測地点における子午線は,天の北極,天頂,天の南極を通る天球上の大円であるが,そのうちの天の北極から天頂を経て天の南極に至る半円部分を,日周運動によって,天体が東から西へ通過するときのこと。極上正中,あるいは単に正中とも呼ぶ。これに対して,子午線の残りの半円部分を天体が西から東へ通過するときのことを北中,あるいは極下正中という。これらの現象を観測することは,位置天文学の基礎をなす重要な分野である。
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世界大百科事典内の南中の言及
【子午線】より
…子午線の名の由来は,方向を十二支で表したときの北の方向の〈子〉と南の〈午〉とを結ぶという意味で,同様に東西を結ぶ卯酉(ぼうゆう)線もある。天球上の子午線を天体が東から西へ通過することを南中と呼び,これが天文学的な時刻の基準になる。例えば太陽が南中すれば太陽時の正午であり,赤経α時の恒星が南中したときは恒星時α時となる。…
【太陽】より
…すなわち春分,秋分の日には昼は夜より十数分も長いのである。 もし太陽が天球上の赤道を毎日同じ速さで1゜ずつ東へずれていくのならば,東経135゜の地点ではつねに日本標準時の正午に太陽が南中するはずである。しかし実際には太陽が1゜ずつ東へずれていくのは,赤道と23゜.5傾いた黄道に沿ってである。…
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