南方(読み)なんぽう

精選版 日本国語大辞典 「南方」の意味・読み・例文・類語

なん‐ぽう ‥パウ【南方】

[1] 〘名〙 (「なんぼう」とも)
① 南の方。南の方面。また、南の方にある国。
※今昔(1120頃か)一七「南方の菩薩・聖衆、如此(か)く来り臨み給ふ」 〔礼記‐曲礼上〕
南北朝時代南朝方をいう。
蔭凉軒日録‐長祿四年(1460)三月二八日「南方楠木一族、於于東寺四塚誅戮
[2] 紫宸殿(ししんでん)のこと。
大内裏図考証(1788)一〇「紫宸殿〈略〉西宮記、及左経記、作南方」

みなかた【南方】

姓氏の一つ。

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デジタル大辞泉 「南方」の意味・読み・例文・類語

なん‐ぽう〔‐パウ〕【南方】

南の方向・方面。また、南の方にある国。「南方に転戦する」「南方海上」⇔北方

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日本歴史地名大系 「南方」の解説

南方
みなみがた

徳島県を二分する慣用的な地域表現で、吉野川流域をさす北方きたがたに対する呼称。現在の小松島市・阿南市・勝浦かつうら郡・那賀なか郡・海部かいふ郡一帯をさす。四国山地中央部を東西に横断する御荷鉾構造線より南側の地帯をなし、地質構造はおもに古生代の秩父帯および中生代白亜紀の地層からなる四万十帯に属する。構造線に沿って標高一〇〇〇―二〇〇〇メートル級に達するつるぎ山地・海部山地の山嶺が東西方向に延び、その間を勝浦川・那賀川・海部川などが穿入・蛇行を繰返しながら流下している。勝浦川と那賀川の下流部には三角洲性扇状地や三角洲からなる沖積平野が発達するが、そのほかは大半が壮年期の険しい山地をなしている。剣山地の南斜面は太平洋からの季節風を正面に受けるため、年平均降水量は三〇〇〇ミリにも達し、わが国有数の豪雨地帯となっている。他方太平洋沖合の南海トラフを震源とする南海地震は約九〇―一五〇年周期で起こっており、安政元年(一八五四)や昭和二一年(一九四六)には海部郡一帯を中心に甚大な津波被害をもたらした。

紀伊水道と太平洋に面する南方沿岸の主産業は古来より水産業であった。「日本書紀」巻一三に允恭天皇一四年、「阿波国長邑」の海人男狭磯が大鰒を献上した話や、「延喜式」神祇践祚大嘗祭条にも鰒や鰒鮨、細螺などの海産物を大嘗祭に貢納した那賀潜女の記述があることから、古来海とのかかわりが深く、海部郡を中心に海部族が占住していたとされる。

南方
みなみかた

宮崎庄の地域区分。弘長元年(一二六一)二月日の奈古神社領注文写(奈古神社文書)に南方の奈古なご社領総計二四町余の社田が書上げられているが、地目に霧島田・祇園田などが含まれており、あるいは後世の内容を含むかもしれない。同年一二月一五日、奈古大宮司職は海清久から清景に相伝されている(「海清久譲状写」同文書)。文保元年(一三一七)一一月一七日、藤原某は宮崎庄南方地頭代に対し、奈古社大宮司重清が伊東四郎の下人の本鳥(髻)を切った罪科によって大宮司職を改易され、頼清に大宮司職を補任したことを報告している(「藤原某書下写」同文書)。暦応四年(一三四一)一一月二二日、沙弥某は南方奈古社修理用に馬一匹を施入している(「沙弥某奉加状写」同文書)。文安二年(一四四五)南方の笠本かさもと村内立聞たちぎき田の合せて二町二段が奈古社の祝とみられる和田わだのいち太郎に売却されている(九月一五日「某証状」・一二月一五日「祐範証状」同文書)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「南方」の意味・わかりやすい解説

南方
みなみかた

宮城県北東部、登米郡(とめぐん)にあった旧町名(南方町(まち))。現在は登米市の西部を占める地域。旧南方町は、1964年(昭和39)町制施行。2005年(平成17)迫(はさま)、登米(とよま)、東和(とうわ)、中田(なかだ)、豊里(とよさと)、米山(よねやま)、石越(いしこし)、津山(つやま)の8町と合併して市制施行し、登米市となった。北部・西部は低い丘陵、東部・南部は旧迫川流域の水田地帯。縄文期の青島貝塚は県内有数の淡水貝塚で、出土品は登米市南方歴史民俗資料館に展示されている。戦国期は葛西(かさい)氏の支配、近世は仙台藩領となり、戊辰(ぼしん)戦争で仙台藩が敗れたあとは宇都宮藩預り地となった。主産業は農業で、良質米の産地として知られ、肉用牛の飼育も盛ん。

[後藤雄二]

『『南方町史』全3冊(1976・南方町)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「南方」の意味・わかりやすい解説

南方
みなみかた

宮城県北部,登米市中西部の旧町域。仙北平野東部にある。 1964年町制。 2005年町,登米町,東和町,中田町,豊里町,米山町,石越町,津山町の8町と合体して登米市となった。迫川の旧流路を中心とする沖積地では米作が盛んで,水田農村の色彩が強い。南西部は蕪栗沼 (かぶくりぬま) の干拓地。畜産も盛ん。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「南方」の解説

みなかた【南方】

和歌山の日本酒。酒名は、南方弥右衛門を創業者とする蔵元の姓に由来。世界的な博物学者の南方熊楠は創業者の次男でもある。純米大吟醸酒純米吟醸酒純米酒などがある。平成24年度全国新酒鑑評会で金賞受賞。原料米は山田錦オオセトなど。仕込み水は紀の川の伏流水。蔵元の「世界一統」は明治17年(1884)創業。所在地は和歌山市湊紺屋町。

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改訂新版 世界大百科事典 「南方」の意味・わかりやすい解説

南方 (みなみかた)

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世界大百科事典(旧版)内の南方の言及

【東南アジア】より

…西からミャンマー,タイ,ラオス,カンボジア,ベトナムの5ヵ国が東南アジアの大陸部を形成し,マレーシア,シンガポール,インドネシア,ブルネイ,フィリピンの5ヵ国が東南アジアの島嶼部を形づくっている。かつて〈南洋〉ないし〈南方〉と称していた地域を,〈東南アジア〉と呼ぶようになったのは比較的新しく,太平洋戦争後のことである。〈東南アジア〉(あるいは〈東南アジヤ〉)という語自体は,1930年代の末ころから,一部の研究者の間で用いられたことがあるが,一般には普及しなかった。…

【徳島[県]】より

…その北斜面は吉野川の流域に含まれ,その中・下流低地が徳島平野であり,〈北方(きたがた)〉という。南斜面は勝浦・那賀両川流域に含まれ,その下流低地を中心とした地区は〈南方(みなみがた)〉とよばれる。地形上,剣山地北斜面は山腹に平たん面が多いため,山地集落の発達が目立つが,南斜面は急傾斜地をなし,山腹の平たん面も少なく,川は穿入(せんにゆう)曲流をなして深い峡谷を形成している。…

※「南方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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