侘・詫(読み)わびる

精選版 日本国語大辞典 「侘・詫」の意味・読み・例文・類語

わ・びる【侘・詫】

〘自バ上一〙 わ・ぶ 〘自バ上二〙
気力を失って、がっくりする。気落ちする。
※続日本紀‐宝亀二年(771)二月二二日・宣命「言はむすべも無く為むすべも知らに、悔しび賜ひ和備(ワビ)賜ひ」
困惑気持を外に表わす。迷惑がる。また、あれこれと思いわずらう。
古事記(712)上「其の神の嫡后(おほきさき)須勢理毘売命、甚く嫉妬(うはなりねたみ)(し)たまひき。故、其の日子遅の神和備弖(ワビテ)〈三字は音を以ゐよ〉」
※仮名草子・仁勢物語(1639‐40頃)上「をかし、男、五十余りなりける女を、まうけける事と、わびける人の返しに」
③ 思うようにならないでうらめしく思う。つらがって嘆く。また、心細く思う。
古今(905‐914)秋上・一九九「秋の夜はつゆこそことにさむからしくさむらごとに虫のわぶれば〈よみ人しらず〉」
徒然草(1331頃)七五「つれづれわぶる人はいかなる心ならん」
④ おちぶれた生活を送る。みすぼらしいさまになる。
※古今(905‐914)仮名序「きのふはさかえおごりて、時をうしなひ、世にわび」
日葡辞書(1603‐04)「Vabita(ワビタ) テイデ ゴザル」
世俗から遠ざかって、とぼしい中で閑静な暮らしに親しむ。閑寂を楽しむ。
謡曲松風(1423頃)「ことさらこの須磨の浦に心あらん人は、わざとも侘びてこそ住むべけれ」
⑥ 困りぬいて頼み込む。困って嘆願する。
※宇治拾遺(1221頃)一一「ただゆるし給はらんとわびければ」
俳諧・本朝文選(1706)五・記類・落柿舎記〈去来〉「かくばかり落ぬる柿を見ず。きのふの価、かへしくれたびてむやと佗(ワブ)
⑦ (詫) 困惑した様子をして過失などの許しを求める。他動詞的にも用いる。あやまる。
※今鏡(1170)六「わび申す由聞かせ参らせよと宣ひければ」
⑧ (他の動詞の連用形に付いて) その動作や行為をなかなかしきれないで困るの意を表わす。…しあぐむ。
※古今(905‐914)夏・一五二「やよやまて山郭公ことづてんわれ世中にすみわびぬとよ〈三国町〉」
※日葡辞書(1603‐04)「ヒトヲ タヅネ vaburu(ワブル)〈略〉 Machivaburu(マチワブル)

わび【侘・詫】

〘名〙 (動詞「わびる(侘)」の連用形の名詞化)
① わびしく思うこと。思いわずらうこと。気落ちすること。
万葉(8C後)四・六四四「今は吾は和備(ワビ)そしにける気(いき)の緒に思ひし君を許さく思へば」
② 閑居を楽しむこと。また、その所。
浄瑠璃・曾我扇八景(1711頃)紋尽し「わびのふせ屋の物ずき」
茶道・俳諧などでいう閑寂な風趣。簡素の中にある落ち着いたさびしい感じ。
咄本醒睡笑(1628)八「花をのみ待つらん人に山里の雪間の草の春を見せばや 利久はわびの本意とて、此の歌を常に吟じ」
④ (詫) あやまること。謝罪すること。また、そのことば。
上井覚兼日記‐天正二年(1574)八月一五日「川上上野守殿藺牟田地頭御侘被成候」

わ・ぶ【侘・詫】

〘自バ上二〙 ⇒わびる(侘)

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