鳥追お松(読み)とりおいおまつ

改訂新版 世界大百科事典 「鳥追お松」の意味・わかりやすい解説

鳥追お松 (とりおいおまつ)

明治初期毒婦小説の代表的ヒロイン。お松が実在の人物かどうかは未詳だが,1877-78年久保田彦作の《鳥追阿松海上新話》が《仮名読新聞》に連載された当時は,〈小屋粂三(くめさ)〉といわれて評判高く,実在性が信じられていた。慶応末年に22,23歳の鳥追女が江戸の武家邸長屋窓などを新内節で流し,若者の血をおどらせた。鳥追女は名をお松といい,慕い寄る男を翻弄し,金を絞って捨てる妖婦。徴兵隊の浜田正司,呉服屋の手代忠蔵,遊び人大阪吉らがそのいけにえとなる。78年4月に3世河竹新七によって舞台化された。メリメの《カルメン》に筋立てが似ているので,その影響作かとも思われる。
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朝日日本歴史人物事典 「鳥追お松」の解説

鳥追お松

明治初期の実録風の小説『鳥追阿松海上新話』のヒロイン。作者は久保田彦作で,明治10~11(1877~78)年に『かなよみ』(『仮名読新聞』の改題)に「鳥追お松の伝」の題で連載され,評判になり,11年には歌舞伎芝居に脚色され,『廿四時改正新話』として上演された。お松は江戸木挽町采女が原に住む定五郎の娘で,美人の評判高く,武家屋敷などを新内を流して歩き,若者たちの憧れの的であったが,典型的な毒婦で,慕い寄る呉服屋の手代忠蔵,元徴兵隊の浜田正司,遊び人大坂吉らを手玉に取って金を絞り取る。モデルとなったお松は谷中の人で,評判の美人であったというが,その実在性については未詳である。

(宇田敏彦)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「鳥追お松」の解説

鳥追お松 とりおい-おまつ

久保田彦作(ひこさく)の小説「鳥追阿松(おまつ)海上新話」の主人公
原作は明治10年「かなよみ」(「仮名読新聞」の改題)に「鳥追お松の伝」の題で連載され,11年合巻形式で刊行された。美貌(びぼう)の新内流しで,男たちを翻弄(ほんろう)して悪事かさね,ついに狂死する毒婦としてえがかれている。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「鳥追お松」の解説

鳥追お松
(通称)
とりおいおまつ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
仇桜雨濡色 など
初演
明治11.4(東京・春木座)

鳥追お松
とりおいおまつ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治15.11(京都・北側芝居)

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