駱賓基(読み)らくひんき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「駱賓基」の意味・わかりやすい解説

駱賓基
らくひんき / ルオピンチー
(1917―1994)

中国作家本名張璞君(ちょうはくくん)。吉林(きつりん)省琿春(こんしゅん)県の商人の家に生まれる。北京(ペキン)で新しい文学、思想に触れ、東北(旧満州)に戻るが、1936年「満州国」当局に追われ上海(シャンハイ)に脱出。蕭軍(しょうぐん)、蕭紅の活躍に鼓舞され、抗日救国軍を描いた処女作『辺陲線上(へんすいせんじょう)』(1938)を書き、おもに抗日戦を描いたルポルタージュ短編で知られた。上海陥落後、香港(ホンコン)、桂林(けいりん)、重慶(じゅうけい)、上海などで文学活動を続け、『北望園の春』(1942)をはじめとする短編は戦時下の庶民の哀歓を描いて新生面を開いたものと高い評価を受けた。中華人民共和国成立後は山東省文教委員会委員、同省文学芸術聯合(れんごう)会副主席などを歴任。文化大革命中は攻撃を受ける。その後金文研究に従事し、その方面の著作がある。ほかに『蕭紅小伝』(1947)、『過去の年代』(1960)などがあり、『駱賓基小説選』(1981)が出ている。

[平石淑子]

『小野忍・飯塚朗訳『北望園の春』(1955・岩波書店)』『市川宏訳『蕭紅小伝』(『現代中国文学12』所収・1971・河出書房新社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「駱賓基」の意味・わかりやすい解説

駱賓基 (らくひんき)
Luò Bīn jī
生没年:1917-94

中国現代の作家。吉林省琿春県に生まれる。本名張璞君。〈満州事変〉で郷土を奪われた,おなじ東北出身の作家蕭軍(しようぐん)や蕭紅の活躍に刺激をうけ,上海に出て抗日救国運動に参加(1936),その抗戦を描いた《大上海の一日》(1937)や《東戦場別動隊》(1938)などの報告文学(ルポルタージュ)により作家活動を開始,とくに抗戦期には南部を転々とする間に,短編集《北望園の春》や長編自伝小説《混沌》など多産な作家として活躍した。《蕭紅小伝》も代表作の一つ。解放後も《王媽媽》など短編を発表したが,晩年に至り創作の筆を断ち,金文研究や《春秋批注》など考証的研究にいそしむ。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「駱賓基」の意味・わかりやすい解説

駱賓基
らくひんき
Luo Bin-ji

[生]1917
[没]1994.6.11. 北京
中国の作家。吉林省,琿春の人。本名,張璞君。上海で抗日戦争に参加,その体験をもとに一連の報告文学『大上海の一日』 (1938) を書いた。その後も創作活動を続け,短編集『北望園の春』 (46) ,長編『混沌』 (47) を発表。解放後も『王媽媽』 (53) などの小説,随筆を執筆。中国作家協会北京分会副主席。

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百科事典マイペディア 「駱賓基」の意味・わかりやすい解説

駱賓基【らくひんき】

中国の作家。吉林省の生れ。日中戦争初期に上海周辺の戦闘に参加。その体験に基づいた《大上海の一日》で認められ,その後短編《北望園の春》,長編《混沌》などを発表。きめ細かい作風をもつ。

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