飛驒(読み)ひだ

改訂新版 世界大百科事典 「飛驒」の意味・わかりやすい解説

飛驒[市] (ひだ)

岐阜県北部の市。2004年2月神岡(かみおか)町,古川(ふるかわ)町と河合(かわい)村,宮川(みやがわ)村が合体して成立した。人口2万6732(2010)。

飛騨市北東部の旧町。旧吉城(よしき)郡所属。人口1万1568(2000)。神通川上流の高原川流域にある鉱山の町。飛驒山脈に属する山地が広く分布し,河岸段丘と二十五山,池ノ山などの山腹に集落が点在する。中心集落は船津で,町内を国道41号線が走る。1966年には高山本線猪谷駅との間の鉱山鉄道が国鉄神岡線(のち神岡鉄道。2006年廃止)となった。神岡鉱山の発展とともに歩んできた町で,鉱山の開発は16世紀末金森氏によってなされ,明治期に三井系の経営となって今日の隆盛をみたが,富山県神通川下流域でのイタイイタイ病問題も起きている。採鉱を中止した茂住坑に大空洞を掘削して宇宙線観測施設,スーパーカミオカンデがつくられた。瑞岸寺の薬師堂は重要文化財,北端県境にある横山楡原衝上断層は天然記念物。

飛騨市南西部の旧村。旧吉城郡所属。人口1466(2000)。神通川上流の宮川西岸に位置する富山県境の村で,中央を小鳥(おどり)川が流れて宮川に注ぐ。村域の大部分は飛驒高地に属する山地で,小鳥川や稲越川の谷底に集落が点在し,宮川と小鳥川の合流点付近が村の中心である。宮川沿いをJR高山本線,小鳥川沿いを国道360号線が通る。農林業を主とするが規模は零細で,米作畜産養魚の複合経営が行われる。和紙製造の伝統工業もある。小鳥川上流には下小鳥ダムがある。

飛騨市南部の旧町。旧吉城郡所属。人口1万6209(2000)。飛驒高地の北部にあって,古川盆地の中心部を占め,中央を神通川上流の宮川が流れる。宮川沿いに国道41号線とJR高山本線が通じる。中心集落の古川は中世後期に飛驒国司家の姉小路(あねがこうじ)氏の拠点となり,近世には高山と富山を結ぶ越中西街道の中継地として栄えた。農林業を主とし,耕地に乏しい飛驒地方の中心的な米作地帯である。木工業,製薬業が立地し,高山市への通勤者も多い。北東部は奥飛驒数河流葉(おくひだすごうながれは)県立自然公園で,数河高原スキー場がある。気多(けた)若宮神社例祭,古川祭に行われる〈起し太鼓〉は裸の若者が太鼓をかついでぶつかり合う勇壮なもので,屋台行事とともに重要無形民俗文化財に指定されている。

飛騨市北部の旧村。旧吉城郡所属。人口1178(2000)。北部は白木峰,小白木峰,唐堀山を境に富山県と接し,中央を宮川が北流する。全域が飛驒高地に属する中山性の山地で,宮川の谷に沿ってJR高山本線と国道360号線が走る。県境にあって古くから文化的,経済的に富山県とのつながりが深い。多雪地で耕地に乏しく,過疎化が著しいが,畜産や高冷地野菜栽培が行われ,また清流を利用して養殖したニジマスを京浜方面に出荷する。
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