日本大百科全書(ニッポニカ) 「山脈」の意味・わかりやすい解説
山脈
さんみゃく
mountain range
mountain chain
連続して脈状に一定の方向に連なる山地をいう。世界における大山脈は、台地や高原と異なり、特定の地帯に分布している。環太平洋造山帯やアルプス‐ヒマラヤ造山帯の山脈群はその例である。この両造山帯の分布と大陸の配置関係は、プレートテクトニクス説で説明されている。世界の各地の山脈は、成因、形成の時代、形や位置などを指標にして区分されている。
[有井琢磨]
成因による区分
この区分による山脈として、褶曲(しゅうきょく)山脈と断層山脈がある。褶曲山脈は、山脈の地質構造が褶曲作用で形成されたものである。世界の大山脈は褶曲運動を主体とする地殻運動で生じたものである。褶曲によって生じた尾根を背斜、谷を向斜とよんでいる。陸上では絶えず侵食作用が働いているので、褶曲の構造が完全に地形に現れている山脈は、ほとんど存在していない。フランスとスイスの間にあるジュラ山脈は、褶曲構造と山脈の起伏が比較的一致した例として知られている。侵食作用を受けて褶曲の背斜部が谷になり、向斜部が尾根になるような場合が多い。ヨーロッパのアルプス山脈・ピレネー山脈・ウラル山脈、北アメリカのアパラチア山脈・ロッキー山脈などでは、山脈の地形と複雑な褶曲構造の関係がよく調査されている。
断層運動で形成された山脈を、断層山脈とよんでいる。この山脈は、断層変位で生じた断層崖(がい)とよばれる急崖で限られている。地塁山脈は、山脈の両側(またはその周縁)が断層崖で限られた山脈である。日本には地塁山脈の発達が良好であり、本州の木曽(きそ)・赤石・鈴鹿(すずか)などの山脈はその適例である。傾動地塊山脈は、山脈の一方の側が断層崖、他の側は傾いた山地斜面からなる地形である。アメリカのシエラ・ネバダ山脈はその典型として知られる。
[有井琢磨]
時代による区分
古生代に生じた山脈(パレイデンPaläiden)、中生代から新生代にかけて生じた山脈など、形成された地質時代によって山脈を区分することがある。前者の例としてヨーロッパのカレドニア山脈・ヘルシニア(バリスカン)山脈、後者の例として環太平洋造山帯およびアルプス‐ヒマラヤ造山帯の山脈などがあげられる。
[有井琢磨]
形・位置による区分
円弧状の一部をなすように配列する山脈を弧状山脈という。日本列島を含むアジア大陸周縁部には、この地形の発達が著しい。対曲・連鎖・平行・雁行(がんこう)・分岐などの諸型がある。主分水嶺(ぶんすいれい)の位置にある山脈を脊梁山脈(せきりょうさんみゃく)といい、この典型的な例はロッキー山脈である。
[有井琢磨]