靖献遺言(読み)セイケンイゲン

デジタル大辞泉 「靖献遺言」の意味・読み・例文・類語

せいけんいげん〔セイケンヰゲン〕【靖献遺言】

江戸前期の思想書。8巻3冊。浅見絅斎あさみけいさい著。貞享4年(1687)成立。楚の屈原ら8人の中国人の遺文略伝を付し、併せて日本忠臣・義士の行状を載せたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「靖献遺言」の意味・読み・例文・類語

せいけんいげん ‥ヰゲン【靖献遺言】

江戸前期の思想書。八巻。浅見絅斎(けいさい)著。貞享四年(一六八七)成立。楚の屈原から明の方孝孺までの、節義を失わなかった八人の中国人の遺文に略伝などを付し、日本の忠臣、義士の行状を付載する。当初は日本の人物を中心にする予定であったが、幕藩体制を考慮して中国のそれに換えた。自説を何ら付していないが、尊皇思想の展開に影響を与えた。なお同一著者による元祿二年(一六八九)成立、寛延元年(一七四八)刊の「靖献遺言講義」もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「靖献遺言」の意味・わかりやすい解説

靖献遺言
せいけんいげん

儒学者浅見絅斎(けいさい)の著書。2巻。1684年(貞享1)絅斎33歳のとき編纂(へんさん)に着手し、87年刻なった。中国の屈原(くつげん)、孔明(こうめい)、陶潜(とうせん)、顔真卿(がんしんけい)、文天祥(ぶんてんしょう)、謝枋得(しゃほうとく)、劉因(りゅういん)、方孝孺(ほうこうじゅ)ら8人の忠臣の遺文、略伝を記し、あわせて日本の忠臣、義士の行状を載せたもの。1689年(元禄2)成立の『靖献遺言講義』はこれを門下生に講義したもの(「教育文庫」「国民道徳叢書(そうしょ)」所収)である。土佐の谷秦山(しんざん)、京都の竹内式部(たけのうちしきぶ)など本書を講じ、とくに式部はこれを公卿(くげ)に講じ、宝暦(ほうれき)事件(1758)の原因をつくる。吉田松陰(しょういん)も本書を愛読し、「靖献遺言の一書は、読者をして勃然沛然(ぼつぜんはいぜん)として忠義の心を興起せしむ」(野山獄(のやまごく)文稿)と記している。本書が近世勤王思想の勃興(ぼっこう)に大きな思想的影響を与えたことは明白である。

[平 重道]

『近藤啓吾著『浅見絅斎の研究』(1970・八坂神社内神道史学会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「靖献遺言」の意味・わかりやすい解説

靖献遺言 (せいけんいげん)

江戸前期の朱子学者浅見絅斎(けいさい)の著。8巻。成立年不詳。義に安んじ,先王に誠意をささげる(靖献)という趣意から,楚の屈原より明の方孝孺に至る中国の8人の忠臣の遺文・略伝を記し,あわせて日本の忠臣義士の行状を載せたもの。広く読まれ,のちの尊王討幕論に大きな思想的影響を与えた。《教育文庫》《国民道徳叢書》所収。
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百科事典マイペディア 「靖献遺言」の意味・わかりやすい解説

靖献遺言【せいけんいげん】

江戸前期の朱子学者浅見絅斎(あさみけいさい)が,中国の8人の忠節の士の言葉を集めるとともに,日本の忠臣の行状を載せた書。8巻。成立年不詳。屈原の《離騒懐沙賦》,諸葛孔明の《出師表》,陶淵明の《読史,述夷斉章》,顔真卿の《移蔡帖》,文天祥の《衣帯中賛》,謝枋得(ほうとく)の《初到建寧賦詩》,劉因の《燕歌行》,方孝孺の《絶命辞》など。幕末の尊王倒幕思想に影響が大きかった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「靖献遺言」の意味・わかりやすい解説

靖献遺言
せいけんいげん

江戸時代初期の朱子学者浅見絅斎 (けいさい) の主著。8巻。寛延1 (1748) 年刊。楚の屈原から明の方孝孺まで,不遇にあっても臣としての君主に対する節義を曲げなかった中国の8人の遺文を集め,その略伝および論評を記した書。幕末の志士に大きな影響を与えた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「靖献遺言」の解説

靖献遺言
せいけんいげん

江戸時代,浅見絅斎 (けいさい) の著書
8巻。1687年刊。中国・日本の忠臣の遺文・行状などを記し,尊王論に大きな影響を与えた。

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