貯・蓄(読み)たくわえる

精選版 日本国語大辞典 「貯・蓄」の意味・読み・例文・類語

たくわ・える たくはへる【貯・蓄】

〘他ア下一(ハ下一)〙 たくは・ふ 〘他ハ下二〙
① 後の用のためにとっておく。物品金銭などを集めてしまっておく。また、比喩的に、知識や教養などを多く修める意にも用いる。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)一「是れ能く解脱の薬を盛り貯(タクハフル)器なり」
※正法眼蔵(1231‐53)谿声山色「年来たくはふるところの書籍を披尋するに」
体力気力などが衰えないように保っておく。
③ 自分のものとして養っておく。
※霊異記(810‐824)下「妻子を蓄(タクハ)へ養ふ。〈真福寺本訓釈 蓄 タクハヘ〉」
④ 髪やひげをはやす。
虞美人草(1907)〈夏目漱石〉九「何時の間にやら黒いものを蓄(タクハ)へてゐる」
[補注]室町時代頃からヤ行にも活用した。→たくわゆ(貯)

たくわえ たくはへ【貯・蓄】

〘名〙 (動詞「たくわえる(貯)」の連用形名詞化)
① たくわえること。また、たくわえたもの。貯蔵。貯蔵品。
書紀(720)仁徳七年九月(前田本訓)「是を以て里に鰥(やもを)(やもめ)無く、家に余の儲(タクハヘ)有り」
財産としてたくわえておく金。貯金貯蓄
史記抄(1477)一九「凍餓するほどの事もなく、たくわへをせぬほどに、千金の家もないと云ぞ」

たくわ・う たくはふ【貯・蓄】

[1] 〘他ハ四〙 =たくわえる(貯)
万葉(8C後)一九・四二二〇「海神の 神の命の みくしげに 多久波比(タクハヒ)置きて」
[2] 〘他ハ下二〙 ⇒たくわえる(貯)

たくわ・ゆ たくはゆ【貯・蓄】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段動詞「たくはふ」から転じて、室町時代頃から用いられた語。多く、終止形は「たくわゆる」の形をとる) =たくわえる(貯)
※史記抄(1477)一一「貨殖は貨財をたくわゆる事」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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