デジタル大辞泉
「訪」の意味・読み・例文・類語
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おと‐ずれ ‥づれ【訪】
① たずねてくること。たずねること。訪問。来訪。到来。
※
古今(905‐914)冬・三三八「わがまたぬ年はきぬれど冬草のかれにし人はおとづれもせず〈
凡河内躬恒〉」
※談義本・風流志道軒伝(1763)二「粽(ちまき)柏餠のおとづれに〈略〉夏の気色を荷(にない)出す」
※古今(905‐914)冬・三二七「みよし野の山のしら雪ふみわけて入りにし人のおとづれもせぬ〈
壬生忠岑〉」
※
雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉上「何時までも梅次郎さんの音信
(オトヅレ)を待つ心算
(つもり)か」
④ 人や物事の動静。事情。
※福翁自伝(1899)〈
福沢諭吉〉雑記「釜次郎は〈略〉糺問所の手に掛て居る。所が頓
(とん)と音
(オト)づれが分らない」
⑤ 音をたてること。おとない。
※右京大夫集(13C前)「かけひの水のおとづれ、鹿の声、虫の音」
⑥ 声または音をたてて合図すること。また、その合図。特に茶道で、中立(なかたち)してのち、囲(かこい)にはいるときの合図をいうことがある。
⑦ 神が恩寵を与えること。
※こんてむつすむん地(1610)二「あにまのいつはりたるじゆうと 身を大きにたのむ事は、天よりの御をとづれにたいかんする也」
⑧ 贈り物。
※宗長連歌自註‐興津藤兵衛尉宛(1517頃)「大方にえやは思はん年の暮 爪木を今日の雪のおとつれ」
おと‐ず・れる ‥づれる【訪】
〘自ラ下一〙 おとづ・る 〘自ラ下二〙
① 音を立てる。声を立てる。
※金葉(1124‐27)秋・一六四「ゆふされば門田の稲葉おとづれて蘆のまろ屋に
秋風ぞ吹く〈源経信〉」
② 人のもとをたずねる。訪問する。おとなう。
※古今(905‐914)雑下・九六三「あまびこのをとづれじとぞ今は思ふ我か人かと身をたどる世に〈
小野春風〉」
③ ある状態、時節がやって来る。
※真夏の死(1952)〈
三島由紀夫〉「このころから、はじめて
忘却が〈略〉夫婦の心に訪れた」
※日本の裏街道を行く(1957)〈
大宅壮一〉長州の神々「第二の
ブームが訪れた」
④ 手紙で様子をたずねる。たよりをする。おとなう。
※蜻蛉(974頃)中「かかるところを見おきて、帰りしままに、いかにともをとづれこず」
※
篁物語(12C後か)「文もやらずなりにけり。女、兄
(せうと)のはかりたるとは知らで、『あやしうをとづれぬ』と思ひをり」
とぶら・う とぶらふ【訪】
〘他ハ四〙
① 問う。問いたずねる。質問する。調べる。
※
書紀(720)欽明一六年二月(寛文版訓)「俄
(しばらく)蘇我の臣問訊
(トフラフ)て曰はく聖王妙
(たへ)に天の道地
(つ)の理を達
(さと)て」
② 訪ねる。訪問する。会いに行く。
※古今(905‐914)雑下・九八二「わが庵は
三輪の山本恋ひしくはと
ぶらひきませ杉立てる門〈よみ人しらず〉」
※書紀(720)推古一六年九月(岩崎本訓)「爰に天皇唐の帝を聘(トフラ)ひたまふ」
※源氏(1001‐14頃)夕顔「大弐の乳母のいたくわづらひて尼になりにける、とふらはむとて」
④ さがし、調べる。たずね調査する。
※平家(13C前)一「遠く異朝をとぶらへば、秦の趙高、漢の王莽、梁の朱异、唐の祿山」
とむら・う とむらふ【訪】
〘他ハ四〙 (「とぶらう(訪)」の変化した語)
※書紀(720)欽明元年九月(寛文版訓)「是に於て大伴の金村住吉(すみのえ)の宅に居(はむへ)り。疾称(まう)して朝(つかまつ)らず天皇青(あを)海夫人(おふとし)勾(まかり)子を遣て慰問(トムラハ)しむること慇懃(ねむころ)なり」
② 探し調べる。さぐる。詮索する。
※教訓抄(1233)四「須は其家々をたづねとむらひて」
とぶらい とぶらひ【訪】
〘名〙 (動詞「とぶらう(訪)」の連用形の名詞化)
① 訪問すること。また、安否をたずねること。訪問。見舞い。
※竹取(9C末‐10C初)「是をかぐや姫聞てとふらひにやる歌」
② 訪問・見舞いなどのための贈り物。また、謝礼のための贈り物。進物。
※大和(947‐957頃)一七〇「風になむあひたまうてわづらひたまひける。とふらひに、薬の酒・肴など調じて」
③ 探して行くこと。案内すること。
※源氏(1001‐14頃)御法「いまはかのくらきみちのとふらひにだにたのみ申べきを」
とむらい とむらひ【訪】
〘名〙 「とぶらい(訪)」の変化した語。
※落窪(10C後)三「今日だにとむらひに物せんと思ひつれども」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報