安否(読み)あんぴ

精選版 日本国語大辞典 「安否」の意味・読み・例文・類語

あん‐ぴ【安否】

〘名〙 (「あんび」とも)
① 安らかであるか、そうでないか。安全か否か。興るか亡びるか。安心と不安。あんぷ。
明月記‐治承四年(1180)五月三〇日「前途又不安否
② (特に人の身の上などについて) 無事か無事でないか。さらに、それを中心とした日常の様子動静消息などをいう。あんぷ。
太平記(14C後)一四「此の間東西数百里を隔て、安否(あんヒ)更に知らざりしかば」
浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)三「主人の安否(アンビ)心元なし爰明てたべ」 〔礼記‐文王世子〕
③ あれこれと考えること。思案。あんぷ。
※浄瑠璃・義経地獄破(1661)一「いそぎあんひを廻らし、此事をはかるに」
[語誌]室町末期ではローマ字書きのキリシタン文献や多くの節用集で「あんぷ」とし、江戸後期の節用集の多くやヘボン「和英語林集成」の諸版は「あんひ(ぴ)」とするところから、近世に「あんぷ」から「あんぴ」へと語形が交替したと考えられる。ただし、すでに室町期に「あんひ(ぴ)」もあるし、明治一〇年頃の「小学読本字引」やその後の「言海」などには「あんふ(ぷ)」も残る。

あん‐ぷ【安否】

〘名〙 (「ふ」は「否」の呉音) =あんぴ(安否)
毛利家文書‐(天文二三年)(1554)四月一六日・毛利隆元書状「元就をあんふにかけ候てくたし候て」
[語誌]→「あんぴ(安否)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「安否」の意味・読み・例文・類語

あん‐ぴ【安否】

無事かどうかということ。安全かいなか。「遭難者安否を気遣う」「安否を問う」
[類語]機嫌様子

あん‐ぷ【安否】

《「あんぶ」とも》「あんぴ(安否)」に同じ。
「サレドモソノ獣生死ノ―ヲ試ミョウト思ウタカ」〈天草本伊曽保二人知音

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「安否」の読み・字形・画数・意味

【安否】あんぴ

無事かどうか、消息を問うときに用いる。〔礼記、文王世子〕王の世子爲(た)りしとき、王季にすること日に三たび、~寢門の外に至り、豎(ないじゅ)のに問うて曰く、今日の安否は何如(いかん)と。

字通「安」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android