精選版 日本国語大辞典 「三輪」の意味・読み・例文・類語
さん‐りん【三輪】
みつ‐わ【三輪】
みわ【三輪】
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能の曲名。四番目物。作者不明。シテは三輪明神の神霊。大和の三輪に住む玄賓僧都(げんぴんそうず)(ワキ)のもとに,1人の女(前ジテ)が来て衣を1枚恵んでほしいと願う。僧都が与えて住みかを聞くと,三輪山の杉のあたりと言って消え失せる。僧都が訪ねると神木の杉に与えた衣が掛かっていて,その裾に神託の和歌が託してあった。やがて巫女(みこ)の姿を借りた神霊(後ジテ)が烏帽子(えぼし),狩衣(かりぎぬ)の男の衣装で現れ,三輪明神にまつわる上古の伝説を物語る。それは,昔,大和に住むある女のもとに毎夜通って来る男がいた。女はその正体を知りたくて男の裾に糸をとじつけ,それを手繰りながら男の跡をつけたところ,この神木に糸が残っていたというのである(〈クセ〉)。神霊はさらに,天の岩戸隠れのときに初めて舞われたという神楽(かぐら)を舞って見せ(〈神楽〉),三輪の神と伊勢の天照大神とは本体が同一なのだと教える。クセと神楽が中心。神道の清浄さを強調する一方,クセで恋愛伝説(三輪山伝説)を描き,独特な雰囲気がある。変型の演出の〈誓納(せいのう)〉〈白式(はくしき)〉〈神道〉〈神遊(かみあそび)〉などは,いずれも神楽を重くみたものである。人形浄瑠璃《妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)》の原拠。
執筆者:横道 万里雄
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