裏返(読み)うらがえる

精選版 日本国語大辞典 「裏返」の意味・読み・例文・類語

うら‐がえ・る ‥がへる【裏返】

〘自ラ五(四)〙
① 裏が返って表になる。ひっくり返る。
※栄花(1028‐92頃)松の下枝「難波江に心とまりて蘆の葉にうらがへるべき心地こそせね」
② 心変わりする。味方を裏切って敵方につく。寝返る。
※時雨亭文庫本聞書残集(12C末)「思ふにも後合せになりにけり〈寂然〉。この連歌、こと人つくべからずと申しければ、うらがへりたる人のこころは」
③ 互いに、相容れなくなる。逆になる。
西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉三二「互に相ひ背反(〈注〉ウラガヘル)するものの如くして、相並んで行かざるべからざるものあり」
高音を発声するときに、地声が出ず、裏声になってしまう。「声が裏返る」

うら‐がえ・す ‥がへす【裏返】

〘他サ五(四)〙
① 表と裏とを逆にする。裏を返して表に出す。ひっくり返す。うらがやす。
古今(905‐914)恋五・八二三「秋風の吹きうらがへすくずの葉のうらみてもなほ恨めしき哉〈平貞文〉」
※宇治拾遺(1221頃)三「湯桶をしたにとり入れて、それがうへに囲碁盤をうら返して置きて」
物事を、ふつうとは反対の面からみたり表現したりする。裏を返す。
真贋の森(1958)〈松本清張〉三「己の劣弱感をそんなかたちで裏返して云ったとしか思えない」

うら‐がえし ‥がへし【裏返】

〘名〙
① 物の裏を返して表に出すこと。また、裏返した状態。ひっくりがえし。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉三「彼写真を裏(ウラ)がへしにしておく」
② 物事の、今までとは反対の一面をあらわすこと。また、反対の面のあらわれた状態。
人情本糸柳(1841か)初「何時までも、逢ひ通したい心故、宵の返事の裏返(ウラガヘ)し」

うら‐がえ ‥がへ【裏返】

〘名〙
① 裏を表にすること。また、物事が反対になること。
歌舞伎筑紫巷談浪白縫黒田騒動)(1875)三幕「その悦びも裏(ウラ)がへに、仔細を話さば其方(そなた)の悲しみ」
② 遊郭への二度目の登楼。うらをかえすこと。
※咄本・かす市頓作(1708)三「又うらがへには、いつ御出なされますといへば」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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