デジタル大辞泉
「心地」の意味・読み・例文・類語
ここ‐ち【心地】
1 外界からの刺激に対して起こる心の状態。心持ち。気持ち。気分。「心地よさそうに眠る」「生きた心地もしない」
→気持ち[用法]
2 物事に対する心の持ち方。考え。思慮。心構え。
「まだいと若き―に」〈源・空蝉〉
3 気分が悪くなること。病気。
「―などのむつかしき頃、まことまことしき思ひ人の言ひなぐさめたる」〈枕・二六五〉
4 (「心地する」の形で)…のようなありさま、…の感じである、という意を表す。ようす。けはい。風情。
「人柄のたをやぎたるに、強き心をしひて加へたれば、なよ竹の―して、さすがに折るべくもあらず」〈源・帚木〉
[補説]1の場合、複合語の下の部分を構成するときは「履きごこち」「夢見ごこち」のように「…ごこち」となる。
[下接語](ごこち)居心地・風邪心地・着心地・座り心地・旅心地・寝心地・乗り心地・人心地・夢心地・夢見心地・酔い心地
[類語]気持ち・心持ち・気分
しん‐じ〔‐ヂ〕【心地】
《「しんち」とも》仏語。
1 心を大地にたとえていった語。
2 戒のこと。心にこうしようと思う意業であるのでいう。
3 菩薩の修行の各階位における心のこと。
4 禅宗で、心の本性、すなわち心性をいう。
しん‐じ〔‐ヂ〕【心地/芯地】
帯や洋服の襟などの芯にする布地。麻芯・毛芯・接着芯など多種ある。
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ここ‐ち【心地】
〘名〙
① 心持。気持。気分。
※竹取(9C末‐10C初)「あれも戦はで、心ちただ痴(し)れに痴れて、守り合へり」
※土左(935頃)承平五年二月五日「恋しきここちしばし休めて、またも恋ふる力にせんとなるべし」
※枕(10C終)一九五「されど、人をば知らじ、ただ心ちにさおぼゆるなり」
② (修飾語を受け「…する」の形で) …のような感じ。様子。
有様。風情。
気色(けしき)。けはい。
※紫式部日記(1010頃か)寛弘五年八月二六日「絵にかきたる物の
姫君の心ちすれば、口おほひを引きやりて物語の女の心ちもし給へるかなといふに」
※
平家(13C前)九「ただ平家の人々は、いつも氷にとぢこめられたる心地して、寒苦鳥にことならず」
※
落窪(10C後)二「入りてけりと、心地もなくて」
※
源氏(1001‐14頃)空蝉「たどらむ人は、心得つべけれど、まだいと若き心地に、〈略〉えしも思わかず」
※平中(965頃)三八「心ちに思ふことなれば、くやしと思ひながら、とかく思ひ乱るるに」
※源氏(1001‐14頃)東屋「いともいとも恥かしくつつましかるべきものかなと思ふに、
すずろに心ちもあくがれにけり」
⑤ 気分の悪いこと。病気。やまい。
※
古今(905‐914)
哀傷・八五九・
詞書「やまひにわづらひ侍りける秋、ここちのたのもしげなくおぼえければ」
※落窪(10C後)三「中納言忽(たちま)ちに御心ちもやみてめでたし」
※
名語記(1275)六「節は、
ふし也。月々にも、ふしのある心地也」
しん‐じ ‥ヂ【心地】
〘名〙 (「しんち」とも) 仏語。
① (戒は心をよりどころとするところから) 戒のこと。〔
梵網経‐下〕
② 心をよりどころとして
菩薩は修行するところから、菩薩の修行階位におけるこころのこと。単にこころをもいう。
※古今(905‐914)
真名序「夫和歌者、託
二其根於心地
一、発
二其華於詞林
一者也」
※米沢本沙石集(1283)一「喜びも無く憂もなく心地
(シンチ)寂静ならば、自然に
禅門に相応ずべきにや」 〔
杜甫‐謁文公上方詩〕
③ 禅宗で、各自の本心、心性をいう。
※正法眼蔵(1231‐53)弁道話「おのおの心地を開明する手をさづけずといふことなし」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
普及版 字通
「心地」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
心地
しんじ
仏教用語。 (1) 心の地。戒を心地という。戒は大地がすべてのものを支えるように人の心を支えるものであるから。 (2) 菩薩の十信ないし十地の五十心を総称して心地という。心の悟りへの発展の段階のこと。 (3) 心即地すなわち心という地。大地が五穀などを生じるように,衆生の心は世間,出世間の一切の法を生じるから。 (4) 密教で修法の際にそこで修法する大壇の面を心地と観じること。大壇上で修法されるに応じて心という地面の上に真理の世界が建立されるから。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報